三菱GTOツインターボの誘惑|中古価格の現実と、維持費・弱点まで赤裸々に語ろう

三菱

【導入】ツインターボの鼓動が、今も心を揺さぶる

かつて“和製スーパーカー”と呼ばれた一台がある。重厚なスタイル、贅沢すぎる電子制御、そして胸の奥を震わせるツインターボ。三菱GTO
バブルの残り香が漂っていた90年代、あのクルマに恋をした若者たちは、今どこで何を思っているのだろう。
この記事では、その三菱GTOツインターボという魅惑のマシンに再び向き合い、中古車市場の現実、維持費、そして弱点にまで、正直に、赤裸々に語っていきたい。

三菱GTOとは何者だったのか?|時代が生んだ“和製グランツーリスモ”

1990年、三菱が世界へ向けて放ったGTO。3リッターV6ツインターボ、フルタイム4WD、4WS、アクティブエアロ…。
今では考えられないほどの機能を、惜しげもなく詰め込んだ“重武装”のスポーツカーだった。
その豪奢さは一部から「重すぎる」「曲がらない」と揶揄されることもあったが、それすらも含めてGTOは唯一無二の存在感を放っていた。

三菱GTOツインターボの中古価格|今、買える現実とプレミアの境界線

2025年現在、GTOツインターボの中古相場は年々上昇傾向にある。
走行距離や程度によって差はあるが、100万円台の個体はほぼ消滅。状態の良いものは250万円〜400万円台にまで高騰。
特に最終型やMT車、純正度の高い個体は人気が高く、今や“買える旧車”とは言い難い状況になりつつある。

維持費は?保険・税金・燃費・パーツ代までリアルに語る

GTOに乗るということは、「贅沢な走り」に付きまとうコストとも付き合うことを意味する。

  • 自動車税(3.0Lクラス):約58,000円
  • 任意保険:30代以上で年10〜15万円(条件次第)
  • 燃費:街乗りで5〜6km/L、高速で9km/L前後
  • タイミングベルト交換:10万kmごと/10〜15万円
  • 部品供給:メーカー在庫減少、ヤフオク・専門店頼み

“覚悟”が試される世界だが、それでも手にした者は「金額では語れない何か」に包まれる。

三菱GTOの弱点|「曲がらない」は本当か?

よく言われる「GTOは曲がらない」という声。
その要因は大きく2つある。ひとつは車重(約1.7t)、もうひとつは当時の電子制御による味付け。
だが実際には、タイヤやサスペンションを最適化すれば、峠道でもGTOは驚くほど俊敏に走る。
「重いけど走る」──それはGTOというクルマが、ドライバーとの対話を求めているからだ。

GTOオーナーになるという選択|専門店、部品事情、そして覚悟

GTOに乗るには、信頼できる中古車専門店との出会いがカギを握る。
メカニズムが複雑なため、知識と経験を持った整備士の存在が不可欠。
パーツはすでに廃盤も多く、中古市場やワンオフパーツに頼る場面も出てくる。
それでも、GTOを選ぶ人はこう言う──「このクルマじゃないと、満たされない」と。

【まとめ】三菱GTOツインターボは、“理屈じゃない”クルマ

三菱GTOは、冷静に考えれば“重い”“燃費が悪い”“維持費が高い”。だが、それでも惹かれてしまうのは、スペックでは語りきれない「熱」があるからだ。
ツインターボが目覚めたときの加速、ステアリングを通じて伝わる重量感、そして自分の足で走らせているという実感。
「なぜ、いまGTOなのか?」という問いに、僕はこう答えたい。
「それは、心がまだ走りたがっているからだ」と。

【導入】ツインターボの鼓動が、今も心を揺さぶる

あのクルマのテールを、夜の国道で見失ったときのことは、今でもはっきり覚えている。
真っ黒なボディに、突き出した太いマフラー。ふたつのタービンが生み出す咆哮を残し、GTOは闇の向こうへと消えていった。

1990年代。まだスマホもなかった頃、クルマは“情報”じゃなく“体験”で選んでいた。
スペックシートよりも、友達の兄貴が乗っていたとか、深夜の峠で見かけたとか、そんな記憶の断片が購買意欲を掻き立てた。

そんな中、ひときわ異質な存在感を放っていたのが――三菱GTO ツインターボだった。
国産スポーツカーの文脈で語るには、あまりにも重量級で、過剰で、そして挑戦的。

でも、その過剰さこそが、僕らのハートに火をつけたのだ。
あれから30年。走りの価値観も時代も大きく変わった。
それでもいま、あの頃の自分にもう一度ハンドルを握らせてみたくなる。

この記事では、三菱GTOツインターボという「過去の怪物」に再び向き合い、中古車市場の現実、維持費、弱点、そしてオーナーになるという覚悟を、すべて綴っていく。
なぜ人は、時代遅れのクルマに心を奪われ続けるのか。その答えを、ツインターボの鼓動の中に探してみよう。

三菱GTOとは何者だったのか?|時代が生んだ“和製グランツーリスモ”

三菱GTO──その名を聞いて胸が騒ぐなら、きっとあなたも90年代を駆け抜けたひとりだろう。
1990年、三菱が世に放ったこのマシンは、同時代のスポーツカーとは明らかに違っていた。
S13シルビアの軽快さでもなく、FD3Sの旋回性能でもない。GTOが目指したのは、「速く、豪華で、美しく、世界を驚かせるグランツーリスモ」だった。

ボンネットの下には3.0リッターV6ツインターボエンジン。最大280psを発揮するそのユニットは、当時の自主規制枠ギリギリ。
だがGTOの真価は、単なるパワーではなく、その“詰め込みっぷり”にあった。

  • フルタイム4WD
  • 四輪操舵(4WS)
  • 可変エアロパーツ(アクティブエアロ)
  • 電子制御サスペンション(ECS)
  • ビスカスLSD、ABS、トラクションコントロール

今でこそ当たり前の装備かもしれないが、30年以上前にこれをすべて搭載していたのは異常だった。
正直、オーバースペックだったと思う。でも、それが良かった。
当時の三菱には、世界に食らいつこうとする開発者の執念があった。
「ここまでやってやる」という気概が、パッケージングの隅々にまで宿っていた。

その姿勢は、まさに“和製スーパーカー”。
まっすぐに伸びたボンネットライン、ふくらみを帯びたリアフェンダー、そしてリトラクタブルヘッドライト。
街に佇むだけで絵になるそのフォルムに、多くの若者が夢を見た。いや、夢を託した。

GTOは“曲がらない”と揶揄された。それでも、曲がらなくても「欲しい」と思わせた何かが、たしかにそこにはあった。
それは技術力でも、速さでもない。「圧倒的に無駄な情熱」という名の、日本車が持っていたかつての美徳だ。

三菱GTOツインターボの中古価格|今、買える現実とプレミアの境界線

GTOが走っていた時代の夜は、まだアナログだった。
深夜のパーキングエリアで、見知らぬオーナー同士がエンジン音だけで会話したあの頃。
そんなGTOが、今では旧車・ネオクラシック市場の中心にいると言っても過言ではない。

2025年現在、GTOツインターボ(Z16A型)の中古価格は、年式・走行距離・状態によって大きく幅があるが、ざっくりと以下の通りだ。

グレード・仕様 価格帯(概算)
初期型(AT車/改造あり) 120〜200万円前後
中期型・5MT(比較的ノーマル) 200〜300万円前後
後期・最終型(MR・低走行) 350〜500万円以上も

かつては「消耗品扱い」されていたタマも、今では希少な“乗れる旧車”として注目されている。
FD3Sやスープラ(80系)と同様に、海外人気やR32スカイラインの高騰も影響し、GTOもじわじわとプレミア価格帯へと押し上げられているのだ。

特に価格上昇が顕著なのは、以下のような条件を持つ個体だ。

  • 5速 or 6速マニュアル車
  • ノーマルに近い外装・内装
  • 低走行&記録簿付き
  • 後期型(エアロレスのシンプルデザインも人気)

「いつかはGTOに」と夢見ていた世代にとって、今はまさにラストチャンスと言えるタイミングかもしれない。
かつて“重くて売れなかった”GTOが、30年の時を経て、“重みのあるクルマ”として評価され始めている
そこには、時代が変わったというよりも、僕ら自身が“変わった”という事実があるのかもしれない。

維持費は?保険・税金・燃費・パーツ代までリアルに語る

GTOのステアリングを握るということは──
過去の名車と今の現実の、ちょうど狭間を生きる覚悟を背負うということだ。
誰もが「乗ってみたい」と思う。しかし「乗り続けたい」と思えるかどうかは、維持費という現実と向き合えるかにかかっている。

ここでは、実際にGTOを所有するうえで想定すべきリアルなコストを、ざっくりとまとめてみた。

項目 目安費用(年間/1回あたり) 備考
自動車税 約58,000円 3.0Lクラス
重量税 約45,000円 車検ごと(1.7t超)
任意保険 年10万〜15万円 30代以上・対人無制限など条件次第
燃費 街乗り5〜6km/L、高速9km/L ハイオク指定
オイル交換 5,000〜8,000円 5,000kmごと推奨
タイミングベルト交換 約10〜15万円 10万km or 経年劣化対策
タイヤ(4本) 8〜15万円 17インチ以上が標準

さらに厄介なのがパーツ事情だ。
三菱はすでにGTOの多くの部品供給を終了しており、純正パーツはヤフオクや専門店、海外輸入に頼らざるを得ない
しかも、エレクトロニクス系や内装パーツは玉数も少なく、価格も高騰傾向にある。

たとえば、

  • アクティブエアロのモーター
  • エアコンパネルのバックライト
  • センターコンソールの内装樹脂部品

こういった“壊れて当たり前”な部品ほど、見つからない。そして高い。
だが、それでも直したくなる。なぜなら、それがGTOと生きるということだからだ。

FDが「走りの軽やかさ」で人を惹きつけたのなら、GTOは「維持する重さ」すら愛おしく感じさせる不思議な魅力がある。
つまりこのクルマ、“維持費”すらドラマになるのだ。

三菱GTOの弱点|「曲がらない」は本当か?

「GTOって、あれだろ?重くて、曲がらないやつ」
そんな言葉を、何度聞いてきたことだろう。確かに、それは一面の真実ではある。だが、それだけでこのクルマを語るのは、あまりにも惜しい。

GTOは、車両重量約1,700kg
当時の国産スポーツカーの中では突出してヘビー級だった。FD3S RX-7が1,250kg前後であったことを考えれば、その差は約450kg
ワインディングや低速コーナーでのアンダーステアは否めないし、クイックなステアリングレスポンスを期待するなら、それはFDやEG6の世界だ。

でもGTOは、そもそも“峠のチャンプ”を目指したわけではなかった。
彼が目指したのは、ハイウェイを何時間でも200km/hで突き進むような、グランドツーリングの王者だったのだ。

とはいえ、GTOは曲がれないわけじゃない
現代のハイグリップタイヤと車高調、そして適切なアライメント調整を施せば、むしろ「しっかり曲がる」スポーツカーに変貌する。
大切なのは、“軽さを武器にする走り”ではなく、「重さを意識して操る」ことに美学を見出すかどうかだ。

初めてステアリングを握った峠の下り坂。
路面に吸い付くように旋回した瞬間、僕はふとこう思った。
「この重量を預かる感覚って、なんだか人生みたいだ」と。

GTOは、確かに軽やかではない。でもそのぶん、一挙手一投足に重みと意味がある
曲がらないと笑う人には、きっとこのクルマの“語りかけてくる静かな声”が届いていないだけなのだ。

GTOオーナーになるという選択|専門店、部品事情、そして覚悟

GTOを手に入れる――それは、単にクルマを買うという行為じゃない。
「この時代と、もう一度向き合う」という決意表明に近い。

まず必要なのは、信頼できる専門店との出会いだ。
GTOはその構造上、整備の難易度が高く、国産スポーツの中でも“メカ泣かせ”として知られている。
フルタイム4WD、4WS、アクティブエアロ……現代の診断機が通じない、アナログとデジタルが混ざり合った独特の構成ゆえ、経験値のある整備士の存在が不可欠となる。

全国にはまだ、GTOを専門に扱うショップやメカニックが点在している。
そういった店では、パーツのストック状況、社外パーツの適合情報、構造的なクセまで把握しており、何かあったときの“最後の砦”になってくれる。

そして、部品の確保も重要だ。
三菱自体がGTOのサポートから徐々に撤退している今、純正部品はNOS(New Old Stock)または中古パーツが命綱となる。
入手困難な部品は、ヤフオクや海外eBay、SNSコミュニティを通じて探すしかないケースも少なくない。

たとえば、リトラクタブルのモーターやエアロウイングの稼働機構、エアコン制御ユニットなどは、一度壊れると長期戦を覚悟しなければならない。

でも不思議なことに、そういう“面倒さ”があるほど愛着が湧くのが、GTOというクルマの魔力だ。
苦労して直したその部品に、まるで人格のようなものを感じてしまう瞬間がある。

「このクルマ、なんで俺にだけは機嫌を損ねないんだろう?」
そんな錯覚すら覚えるほど、GTOはオーナーとの関係性を深く築いてくる。
それは、パーフェクトに作られた現代車にはない、“不完全さゆえの対話”がそこにあるからだ。

GTOを選ぶということは、効率とは真逆の道を行くことだ。
でもその先にあるのは、スペックでは測れない「機械との絆」。
それを味わいたい人にとって、GTOは間違いなく、最高の“相棒”になるだろう。

【まとめ】三菱GTOツインターボは、“理屈じゃない”クルマ

振り返れば、GTOというクルマはいつだって“合理性の外側”にいた。
デカくて、重くて、壊れやすくて、維持費もかかる。
それでも、人はなぜこのクルマに惹かれてしまうのだろう?

それはきっと、GTOが「理屈では語れない何か」を宿しているからだ。
走り出す前のタービンのうなり、ステアリングを切った瞬間に伝わる車重、路面から返ってくる正直な振動。
そこには、今どきのクルマではもう味わえない“命の手触り”が残っている。

確かに、GTOは完璧なクルマではない。
だけど、完璧じゃないからこそ、ドライバーの“想い”が入る余地がある
それはまるで、人との関係に似ている。
弱さも、欠点も受け入れて、それでも一緒にいたいと思える──それが本当の“愛”なんじゃないかと思う。

いまGTOに乗るということは、過去と今をつなぐ旅路に出ることだ。
かつて憧れたあの姿に、自分の現在を重ね合わせながらハンドルを握る。
そのとき、助手席にはきっと──
あの頃の自分が、静かに座っている。

GTOはもう、ただのスポーツカーじゃない。
それは、“走る”という言葉の奥にある、感情の記憶そのものなのだ。

執筆:橘 譲二(たちばな・じょうじ)

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