GRヤリス、新型と旧型どっちが“買い”?|違い・馬力・燃費を徹底解説!

トヨタ

「同じGRヤリスなのに、まるで別の生き物に乗っている気がした」

僕はこの目で見た。この手でステアリングを握り、この心でエンジンの鼓動を感じた。
峠で旧型と新型を並べ、サーキットで背中合わせに攻めた。
そこで気づいたんだ──“進化”ってのは、スペックシートの数字が増えることじゃない。
それは、走るたびに自分の中の「なにか」を震わせてくれるかどうかなんだ。

新型GRヤリスは、ただ強く、速くなっただけじゃない。
ハンドルを切る角度すら、人生の選択みたいに思わせてくる。
じゃあ、何がどう違うのか? 馬力か、燃費か、それとも内装の匂いか。

そのすべてを──僕の言葉で、伝えたい。


馬力・トルクの進化──「踏めば、世界が書き換わる感覚」

旧型GRヤリスは、G16E‑GTSターボエンジンにより 272ps(200kW)/6500rpm 37.7kg・m(370Nm)/3000~4600rpmの出力を誇っていたが、新型では 304ps(224kW)/6500rpm 40.8kg・m(400Nm)/3250~4600rpm と、その差はただの数値にあらず、身体に伝わる振動の質そのものを変えるレベルだ。

特に、新型で初搭載された 8速AT(GR‑DAT) は、0‑60mph(約0‑100km/h)加速を旧型より約1秒以上短縮。マニュアルでも同様に速さの実感が得られ、ATの“速さと確実さ”という魅力が走りの世界に広がった。

旧型は、どこかにワイルドな感じを残した。道具としての優端さはある。だけど、どこか「まだ進化途中」の精神を感じていた。

それが新型になり、尺約にして+30馬力、トルク+3kgm。 数字以上に「足りなかった精神の方程性」を手にした感覚がある。 振り込めば、身体のチューンはずれ、手に残る振動が「やり過ぎだ」とさえ感じる。

だけど、その身体が触れる速度は、これまで体験したことのない「ビート」を持っている。

燃費と実用性──「速さの代償か、覚悟の証しか」

かつて、クルマは「燃費」で語られる時代があった。
カタログに記された数字が、購入理由になったこともある。
でも、GRヤリスを選ぶとき、その物差しだけで語るのは、あまりに味気ない。

新型GRヤリスのWLTCモード燃費は、10.8(8AT)~12.4km(6MT)/L。
対する旧型は、13.6km/L前後を記録していた。
この差をどう見るか──ここが、ドライバーの“走りの哲学”を問われる分岐点だと、僕は思っている。

なぜなら、新型は最高出力304馬力。旧型から+30馬力もの進化を果たしている。
それだけじゃない。シャシーの補強、トルクの増強、そしてオートマ搭載による制御系の刷新。
そういった“速くなるための積み重ね”が、そのまま重量というカタチでのしかかっているにもかかわらず──この数字に収めてきた
つまりこれは、トヨタが「性能を上げながらも、実用性は置き去りにしない」という矜持を込めてきた証だ。

もちろん、理想の数値ではない。
でも、スポーツカーが“夢”だけで終わらないためには、こういう着地が必要なんだ。
たとえば、燃料タンクは50リットル。
実燃費10km/Lでも、500km以上の航続距離が確保できる。
この数字が意味するのは、「日常でGRヤリスを走らせてもいいんだ」という、ある種の“許可証”だと思う。

だが、それでも覚悟は必要だ。
燃費という項目に「ストーリー」があることを、乗る前から知っておくべきだ。

当然“乗り方次第”で燃費に差が出る。ATでも大人しく走れば旧型並みに伸びる印象がある。
踏めばもちろん燃費は落ちる。だが、それすらも“乗ってる感”があると、思わせてくれる。

そう、それがGRヤリスというクルマの“本質”なのだ。
ただの移動手段ではなく、アクセルひと踏みで自分の感情を波立たせる機械。
速く走ることは、燃料を食うこと。
でも、その速さの中に、心を揺さぶるなにかがあるなら──それは“代償”じゃない。自分が生きてる証拠だ。

燃費の数値に落胆する前に、こう問いかけてみてほしい。
「君は、心まで走らせてくれるクルマを、最後にいつ運転した?」と。

ATの誕生とMTの継承──「選べるという自由が、走りを豊かにする」

GRヤリスという存在において、今回の新型最大の驚きは──
**8速AT「GR-DAT」**という名の新しい“自由”が与えられたことだった。

WRCで鍛え上げたトヨタのレーシングDNAが、市販車の心臓部へと流れ込む。
これは単なるオートマではない。“意志”を持った変速機だ。

その制御は極めてダイレクト。パドルを引けば、即座に反応。
シフトダウン時には、人間の技量では到達し得ないタイミングでのブリッピング。
クラッチがないことで挙動も安定し、車体全体の挙動が整う。
速さと安心感、そして「クルマが先回りしてくれるような感覚」──
まるでコ・ドライバーが心を読んで指示を送ってくるかのような走りが手に入る。

一方で、6速MTは健在。クラッチの重さやギア比は旧型と大きく変わらず、「自分の意思をギアに込める感覚」をそのまま味わえる。

MTがあるという事実は、メーカーの信念だ。
ドライバーの手と足、心とエンジンが繋がる“原始の回路”を、トヨタは残したんだ。
クラッチは旧型同様にズシリと重く、ギアの入りも意志を問われる。
「おまえ、本気で運転する気あるか?」と、クルマから試されてるような感覚。

でも、その不器用なやり取りが、たまらなく愛しい。
ミスシフトも、ギクシャクしたスタートも、全部“生きてる証”として刻まれていく。

だからこそ、選べるようになった今のGRヤリスは、過去最高に自由で、過去最高に深い。

走りにこだわるなら、どちらを選ぶかは“哲学”の領域だ。
「ATだから劣る」なんて言葉は、もう時代遅れだし、
「MTこそ至高」という声にも、無言で並び立つ覚悟がある。

GRヤリスは問いかけてくる。
「今日のおまえは、どんな走りを選ぶんだ?」と。

MTを選ぶ日は、自分の感覚で全てを操る日。
ATを選ぶ日は、マシンとの共鳴に身を委ねる日。
どちらも間違っていない。ただ、その選択にこそ、“ドライバー”の存在理由が宿る。


内装とドライバビリティ──「心が動く、触れる空間」

旧型も十分にスポーティな内装だったが、新型はより洗練され、かつ実戦的に仕立てられている。

クルマに乗り込んで、エンジンをかける前に鼓動が速まることなんて、滅多にない。
でも、新型GRヤリスのドアを閉めた瞬間、僕はこう思った。

**「ああ、この空間は、本気でドライバーを走らせるために設計されている」**と。

新型GRヤリスに乗り込んで最初に驚くのは、インパネ全体がドライバーに15度傾けられているという事実だ。これは視認性や操作性を優先した、スイッチ類は最小限、必要な情報だけが鮮やかに浮かび上がる。

インパネ全体が、わずか15度──たったそれだけ、されどそれだけで、まるで世界が“自分中心”に動き出す。
スイッチ類の配列も、情報表示のシンプルさも、すべてが意図的だ。
「触るため」ではなく、「感じるため」の操作系。
無駄を削ぎ落としたその思想は、もはや“戦闘機のコックピット”と呼んでもいい。

そして、座った瞬間の感覚が、また格別だった。

シートポジションは旧型より25mm低下し、頭上空間は37.5mm広がった。この設計の妙が、重心感覚をドライバーに近づけ、地面を“感じる”ような、そんな錯覚を覚える。

「一体感」という言葉を体で理解させてくれる。

正直、乗り込んだ瞬間に“これは本気だ”と感じた。目線が低くて、包まれるような感じ。
まさにマシンに乗ってるという感覚。

そう、それは“クルマに乗る”のではなく、**“マシンと融合する”**という体験。
ステアリングに触れた瞬間、シートが背中を支えた瞬間、
そのすべてが「今、走る準備が整った」と告げてくる。

旧型も十分にスポーティだった。
だが、新型には明確な意図がある。“見せる内装”ではなく、“走らせる内装”
インテリアというより、もはやインターフェース。
人間と機械を、速度という言語でつなぐ回路が、そこには張り巡らされている。

この内装は、静かに主張している。
「君が本気で走るなら、僕は全力で応える」と。

価格と購入判断──「その進化は、いくらの価値か」

最終的に、誰もが気にするのが“価格”だろう。
けれど、GRヤリスというクルマを語るとき、単純な「高いか安いか」の二元論では測れない。
むしろ、この進化に、あなたは“いくら分の感情”を動かされるか──そこに真価がある。

まずは事実を並べてみよう。

旧型

  • RC:3,300,000円〜

  • RZ:3,960,000円〜

  • RZ ハイパフォーマンス:4,560,000円〜

新型(2025年モデル)

  • RC(6MT):3,560,000円〜

  • RC(8AT):3,910,000円〜

  • RZ(6MT):4,480,000円〜

  • RZ(8AT):4,830,000円〜

  • RZ ハイパフォーマンス(6MT):4,980,000円〜

  • RZ ハイパフォーマンス(8AT):5,330,000円〜

この差額、おおよそ26〜77万円。
確かに“数字”だけを見れば、値上がりは明白だ。
けれど、内実を掘れば、それは単なるインフレの反映ではない。

+30馬力のパワーアップ、+3kgmのトルク、8速ATの搭載、剛性強化、コックピットの刷新、シートポジションの低重心化……
これらのすべてが、ただ“足し算されたスペック”ではなく、走る意味を再定義する要素として宿っている。

それは、いわば「まったく新しい個体」だ。
同じGRヤリスという名を冠しながらも、その本質は別物に進化している。

では、旧型はどうか。

今、中古市場を覗けば、程度の良い個体が280〜380万円前後で流通している。
特にMTモデルは人気が高く、価格の下落も緩やかだ。
もしあなたが「軽さ」や「原始的なダイレクト感」を優先するなら、旧型を選ぶ理由は十分にある。
AT不要で、シンプルなマニュアルドライブを愉しみたいなら、それもまた立派な“信念の選択”だ。

結局、どちらを選ぶかは“価値観”に委ねられる。
安いから買う、高いから躊躇う──それは日用品の思考だ。
でも、GRヤリスは「日常の中の非日常」を手に入れるためのクルマ。
その価値を金額に還元できるかどうかは、あなたがどれだけ“心でクルマを選ぶか”にかかっている

価格表を見つめる前に、目を閉じて想像してほしい。
ステアリングを握った瞬間の高揚。
アクセルを踏み込んだときの、身体を突き上げるような加速感。
そして、信号のない夜のワインディングで、あなたがふと息を呑む瞬間。

その時間に、あなたはいくら払える?

その問いに「YES」と答えられたなら、たとえ500万円だって、安い買い物かもしれない。

新型 vs 旧型:タイプ別おすすめ表

あなたの走りの価値観 新型が“買い” 旧型が“買い”
パワーと速さ ◎ 304psの余裕 ○ 272馬力で必要十分
ATでラク&速く ◎ GR‑DATは革命的 × 非対応
MTで操りたい ○ 6速MT ○ 6速MT
視界・装備・快適性 ◎ 最新設計 △ 素朴さあり
コストパフォーマンス ○ 高いが先進的 ◎ 比較的安くて優秀
“軽さ”重視 △ 剛性は増したが重い ◎ 軽量・ピュア

【まとめ】──GRヤリスという「生きた機械」を選ぶなら

試乗を終え、ヘルメットを脱いだ瞬間。
僕の胸に残っていたのは、“速さ”でも、“スペック”でもなかった。
それは、エンジンから伝わる熱。
ステアリングを通して感じた、たしかな“生きた意思”だった。

新型GRヤリスは、もはやただのマシンではない。

パワーは304馬力へと高まり、足まわりも、制御系も、内装までもが刷新された。
だけど、そうした目に見える数値よりも、僕の心を震わせたのは──
アクセルを踏んだ瞬間に感じた「おかえり」という感触だった。

クルマに乗って、「帰ってきた」と思えたのは、いつ以来だろうか。
子供の頃、父の運転するセダンの助手席で風を感じたあの記憶。
20代、仲間と峠を駆け抜けた夜。
そして今、僕の隣で鼓動するGRヤリスは、そのすべてを抱きしめてくれる“相棒”だった。

でも、旧型を否定する気はまったくない。
むしろ、あの軽さ、あのダイレクト感、あの「削ぎ落とされた感覚」は、今も僕を魅了する。
まだ未完成な部分すら、“育てる楽しさ”に変わる。
峠を走れば、エンジンの咆哮と共に、若かったあの頃の自分に戻れる気がした。

だから、僕はこう思うんだ。

選ぶのは、スペックじゃない。人生の物語なんだ。

GRヤリスという名前が冠されている理由。
それは、たった一つ──「走りに妥協しない」という意志だ。
どちらのモデルにも、その意志は確かに宿っている。
そしてその意志は、あなたの中の“走りたい気持ち”と響き合う。

最新の装備で未来を見据えるのか。
研ぎ澄まされた軽さで原点に立ち返るのか。

どちらを選んでも、きっと後悔はしない。
なぜなら、選ぶその瞬間から、GRヤリスはあなたの“物語”を一緒に走り出すからだ。

新旧どちらも、GRヤリスという名前を冠しているのは、「走りに妥協しない意志」が通底しているから。
その意志に、あなたが共鳴する方を選んでほしい。

執筆:橘 譲二(たちばな・じょうじ)

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