なぜ僕らはロードスターを選ぶのか?2025年新型モデルが語る“運転の歓び”

マツダ


ステアリングを握った瞬間、指先から何かが蘇った。

エンジン音、クラッチの重み、路面のわずかな段差さえ、五感に伝わってくる。

ああ、これだ。僕が「クルマっていいな」と思えた、あの感覚。

マツダ・ロードスター——このクルマはいつも“数値”じゃない“感覚”を教えてくれる。たとえ0-100加速が特別速くなくても、パワーや価格で他に劣っていても、なぜかこのハンドルを握ると、僕らは笑顔になれる。

2025年モデルロードスターが発表されたとき、正直こう思った。「どうせちょっとしたマイチェンだろう」って。でも、試乗した瞬間、その考えは吹き飛んだ。これはただの改良じゃない。“運転の歓び”を再定義する一台だった。


ロードスターは“速さ”じゃない。“歓び”を走らせるクルマだ


馬力がすべてじゃない——その信念を体現してきたのが、ロードスターだ。

初代ユーノス・ロードスター(NA型)から続く哲学は、常に「人とクルマの対話」を重視してきた。余計な電子制御を削ぎ落とし、軽さを武器に、操作する楽しさに全振りした名機。それがロードスターの根幹だ。

最新型となる2025年モデルも、その魂は変わっていない。プラットフォームやエンジンの基本構成は前モデルを踏襲しつつも、剛性バランスや制御ソフト、トランスミッションのリファインなど、“感じ取れるレベル”で走りの質が磨かれている

注目すべきは、「あえてパワーを追求しない」姿勢だ。馬力は136馬力〜184馬力と現代のスポーツカーとしては控えめかもしれない。でも、この数値こそが、アクセルを踏み込んだ瞬間から「ちょうどいい暴れ馬」として、街でも峠でも、クルマと対話できる絶妙なバランスを生んでいる。

この「軽さ×絶妙なパワー×FR(後輪駆動)」の三位一体が、ロードスターならではの“運転する歓び”を形にしているんだ。

2025年、新型ロードスターND型の全貌

ND型——この3文字に、マツダが込めたのは単なる“後継”ではなく、“刷新と継承”のバランスだ。

初代ロードスターの設計思想を引き継ぎながら、ND型では細部までリファインが施された。特に注目すべきは以下のポイントだ。

【ND型ロードスター|ソフトトップモデル】

エンジン:直列4気筒 1.5L SKYACTIV-G

最高出力:136ps(100kW)/7,000rpm

最大トルク:152Nm/4,500rpm

トランスミッション:6速MT/6速AT

駆動方式:FR(後輪駆動)

車両重量:約1,010〜1,070kg

価格(日本国内参考):¥2,898,500〜

【ND型ロードスター RF|リトラクタブル・ファストバック】

エンジン:直列4気筒 2.0L SKYACTIV-G

最高出力:184ps(135kW)/7,000rpm

最大トルク:205Nm/4,000rpm

トランスミッション:6速MT/6速AT

駆動方式:FR(後輪駆動)

車両重量:約1,110〜1,130kg

価格(日本国内参考):¥3,796,100〜

ボディ剛性やサスペンションジオメトリにも細かな調整が入り、「まるで自分の身体がそのまま四輪化されたかのような一体感」がさらに高まっている。特にコーナーでの姿勢変化や、リアの接地感が格段に向上しているのが印象的だった。

また、今回のND型では、外装にも控えめながらもシャープな変更が加えられている。薄型化されたLEDヘッドライト、緩やかに絞られたリアフェンダー、そして“見た目の軽快さ”にもこだわったディテールワーク。

この美しさは、まるでクラシックギターのようだ。触れた瞬間から、使い手の感情を引き出すためだけに生まれてきた道具——そんな存在感がある。

そして忘れてはならないのが、「RF(リトラクタブル・ファストバック)」の存在。クローズドボディの剛性感と、開けたときの開放感。そのギャップこそが、RFの真骨頂。ND型でもその選択肢は健在だ。

つまりND型は、ロードスターという名の“思想”を次の時代に繋ぐためのアップデートだと言える。

ロードスターは、操作の歓びを届けるためにある

「なぜ、もっとパワーを上げなかったのか?」

競合が200馬力を超えるこの時代。EVスポーツカーが0-100km/h加速を3秒台で駆け抜ける時代。
その中で、136馬力/184馬力というスペックを掲げたND型ロードスターに、僕は素朴な疑問を持った。

僕の答えはこうだ

「“速さ”と“楽しさ”は、比例しない。ロードスターにとって必要なのは、アクセルを踏んだ瞬間に“自分が操作している”と感じられる感覚なのだ」と

目的は“数字”ではなく“伝わり方”だったのだ。

だからND型には、あえてターボもハイブリッドも採用されていない。あくまで自然吸気。


アクセル操作がそのまま回転数の上昇へとつながる、素の反応。そのリニアさこそが、ドライバーとの対話を生む。

「クルマが軽いと、操作が“感覚の延長”になる」

「特にFR車では、それが顕著に出る。だから“軽さ”だけは、絶対に譲れなかった」

現行車で1トン少々という軽さは、ただ軽いだけではない。

剛性確保のために構造を強化し、安全基準への対応も進めながら、彼らは“増やすこと”ではなく、“削ること”と闘ってきた。


その結果、初代NA型とほぼ同等の重量を維持している。これはもはや、設計の執念だ。

ND型ロードスターは、ある種の“逆行”を選んだモデルかもしれない。
けれどその選択には、一本筋の通った哲学がある。


僕らがステアリングを握り、1速に入れて、最初のコーナーに向かうとき——
そこにあるのは、スペックを超えた「自分の感覚が、路面を掴んでいる」という確信。

それが、ND型を選びたくなる最大の理由なんだとステアリングを切るたびに思う。


「そうか。これは“速く走るクルマ”じゃない。“気持ちよく走るための道具”なんだ」と。

内装、外装、エモーション。2025モデルが与えてくれた“感覚”

クルマに乗り込む前——ドアハンドルに手をかけた瞬間から、すでに“物語”は始まっている。

新型ロードスターND型の外装のシルエットは細部の質感が確かに違う。

フロントライトの形状はより薄くシャープに、サイドシルの陰影は滑らかで、どこかクラシックスポーツの気品すら漂う

特にリアフェンダーの張り出しには驚かされた。視覚的に軽やかでありながら、立体感と抑揚を持たせたそのラインは、「駆け抜ける姿」が頭に浮かぶほど美しい。

内装もまた、“感覚のデザイン”が行き届いている。

新設計のスポーツシートは、腰まわりをしっかりとホールドしながらも、硬すぎず柔らかすぎない「ちょうどよさ」がある。長時間のドライブでも疲れにくく、まさに“人間工学に基づいた一体感”が宿っている。

メータークラスターはアナログとデジタルの融合型。センターには視認性の高いタコメーターが置かれ、ドライバーの視線誘導を自然にナビゲートしてくれる。

さらに、ステアリングとシフトノブの質感が抜群だ。手に吸い付くようなレザーと、操作時のクリック感。それは単なるパーツではなく、「感情を伝える道具」だと感じさせてくれる。

ドアを閉めた瞬間の「コトン」という音すら、ND型では味わい深い。軽量化しながらも、どこか“薄っぺらさ”を感じさせないのは、マツダの音響設計技術の進化かもしれない。

ロードスターというクルマは、ただ「走る」だけでは終わらない。

“見る喜び”“触れる感動”“所有する誇り”——すべてが、一台の中に詰まっている

新型ロードスターの価格と、手にする価値

まず、気になるのはやっぱり価格だろう。

2025年型マツダ・ロードスター(ND型)は、日本では以下の価格帯で発表されている。

  • Soft Top:¥2,898,500~
  • RF(リトラクタブル・ファストバック):¥3,796,100~

「ちょっと高いな」と思う人もいるかもしれない。でも、ちょっと待ってほしい。

ロードスターが提供してくれるのは、単なる“モノ”ではない。

それは「走るたびに心がほどけていく体験」であり、「アクセルの感触が1日の気分を変えてくれる時間」なのだ。

例えば、同価格帯のSUVやハイブリッド車と比べれば、ロードスターは確かに「実用性」では劣るかもしれない。後部座席もなければ、荷室容量も限られている。

でも、このクルマはこう語りかけてくる。

「それでも、君は運転を楽しみたいか?」

その問いに「はい」と答える自分がいるなら、それだけで“価値”は十分じゃないだろうか。

しかも、ロードスターは長期所有に耐える「飽きのこない設計」がされている。10年乗っても、その都度新しい発見がある。
ND型を10万キロ以上乗り継いできたオーナーの中には、「これ以上のドライバーズカーはもう現れない」と言う人もいる。

そんな“人生の相棒”になるはずだ。

そして、伝説はふたたび走り出す──マツダ ロードスター12R(MSpR 12R)

2025年1月、東京オートサロン。

光の中に静かに姿を現したそのクルマは、ただの限定車ではなかった。

──それは、マツダが「走る歓び」という言葉に、あらためて命を吹き込んだ瞬間だった。

ロードスター12R。正式名称は「Mazda Spirit Racing Roadster 12R」。

マツダ・スピリット・レーシングブランドが世に送り出した第一号機にして、ロードスターという思想の“集大成”とも言える一台だ。

限定200台。専用チューンの2.0Lエンジンは、自然吸気でありながら200馬力を目指す。
数字にすれば些細かもしれない。でも、このクルマは数字では語れない。

  • エンジン:手組みの2.0L SKYACTIV-G。専用カム、ピストン、ヘッド、エキマニで構成される純粋な“官能系NA”
  • 足まわり:ビルシュタイン製車高調、鍛造RAYSホイール、ブレンボ製キャリパー──まるでレースカーの履歴書
  • 仕立て:熟練エンジニアが一台ずつ組み上げる“クラフトマンシップの極み”
  • 価格:700万円台後半──それは“ただの乗り物”ではない、“人生に残る体験”の価格

ND型が築き上げた軽快なFRの愉しさはそのままに、12Rはまるで“走るためだけに生まれた楽器”のようだ。

クラッチをつなぎ、アクセルを踏む。そのわずかな動作にさえ、クルマが「わかってる」と応えてくる。

操作が、感情になる。

ブレーキを踏めば、車体が「信じていい」と言う。
ギアを選べば、「ついてこい」と背中を押される。

風と対話し、路面と踊る。12Rのコックピットは、運転ではなく“表現”の場所だ。

かつての名車、M2 1001を記憶している者ならば、この感覚に心が震えるはずだ。

「これは現代のロードスターの頂点だ」

そう言わせる理由は、スペックじゃない。数字じゃない。
ただ、このクルマが“人にしかできない運転”を、信じ抜いて作られているからだ。

12Rは叫ぶ。「運転が好きだ」と胸を張ることを、もう一度、許してくれるクルマなのだ。

12Rが示す未来──運転の歓びは、保守される

ND型が「歓びの再定義」なら、12Rは「歓びの昇華」だ。
限定200台。エンジンも足まわりも、触れるたびに鼓動が跳ねる仕様を、メーカー自身が保証付きで提供する──そんな時代は、30年に一度だろう。

走ること、感じること、その全てを研ぎ澄ませたこのクルマは、だからこそ「誰にでも届くもの」ではない。
運転を敬い、クルマと心を通わせたい者だけが手にできる“特別な相棒”だ。

ND型と12R──異なる顔のロードスター。でも、その本質は同じだ。
「自分で操作する歓び」を、心底味わいたい人のために生まれてきた存在。

ロードスターはいつも問いかける。君は、走る時間を愛してるか?

その答えが「はい」なら、ND型でも12Rでも、あなたはその問いに応えてくれる準備ができている。

僕らがまた“ステアリングを握りたい”と思える理由

自動運転が進み、EVが主流になり、カーライフはますます“便利で静か”になっていく。

でもその一方で、どこか置き忘れられていく感覚がある。「自分の意志で走る」という、あの原始的な喜びだ。

ロードスターは、それを取り戻させてくれる。

アクセルを踏み込んだときの鼓動。ステアリングを切ったときの路面の抵抗。ギアを変えたときの、わずかな指先の緊張感。
どれも、人間でなければ味わえない。人間だからこそ、嬉しくなる。

そして、2025年の新型ロードスターND型は、それらすべてを研ぎ澄まし、再定義してくれた。

便利ではないかもしれない。荷物も積めないし、二人しか乗れない。

でもその代わり、クルマと“会話”ができる

アクセルに対して「うん、いいね」と応えてくれる。
シフトチェンジに対して「任せた」と託してくれる。
まるで親しい相棒のように、毎日のドライブに“感情”を添えてくれる。

だから僕は、またこのクルマを選ぶ。

そして、あなたにもきっと、同じ気持ちになってほしい。

なぜ僕らはロードスターを選ぶのか?
その答えは、“運転”という行為が、人生をもっと好きにしてくれるから——だ。


ロードスター12R|よくある質問(FAQ)

Q1. ロードスター12Rとは何ですか?
ロードスター12Rは、マツダが2025年に発表した限定200台の特別仕様車です。スーパー耐久レース技術を応用した「マツダ・スピリットレーシング(MSpR)」ブランドから発売され、エンジン・足まわり・内装すべてが特別チューンされています。
Q2. エンジンのスペックは?
専用チューンされた2.0L SKYACTIV‑Gエンジンを搭載。カムやピストン、ヘッド、エキマニなどが専用品で、開発目標として200PSを実現しています(NAエンジンとしては極めて高出力)。
Q3. 価格はいくらですか?
正式な販売価格は非公開ですが、複数報道では「約700万円台後半」とされています(vague.style より)。
Q4. 通常のロードスターと何が違うのですか?
違いは大きく3点です:①手組みされた高出力エンジン、②ブレンボキャリパーやRAYSホイールなど本格レーススペック、③特別なボディ補強・専用塗装。すべてが「操る歓び」のために構築された仕様です。
Q5. 将来的に再販売される可能性は?
現時点でマツダは再販を明言していません。12Rは限定プロジェクトの一環として生産されたため、再登場の可能性は極めて低いと見られています。

執筆:橘 譲二(たちばな・じょうじ)

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