屋根を開けるという小さな贅沢。オープンカーおすすめ2026──国産・外車、新車と中古、安い一台から4人乗りまで

自動車

信号が青に変わる、その少し前だった。
僕は交差点で、屋根を畳んだ。
電動の幌が後ろへ倒れていく数秒のあいだに、頭上の景色が入れ替わる。
ビルの窓、街路樹の葉、六月の高い空。
それまでガラス越しにぼやけていた世界が、ふいに解像度を上げて流れ込んできた。

アスファルトの匂い。遠くの工事の音。誰かの笑い声。
屋根一枚をどけただけで、街はこんなにも饒舌だったのか。
効率で考えれば、意味のない動作だ。エアコンの効いた車内のほうが、快適に決まっている。

家族のために実用車を選び、屋根の開くクルマなんて非合理だと、自分に言い聞かせてきた人もいるだろう。
その選択は、正しい。大人として、何も間違っていない。
ただ、屋根を開けた一瞬に流れ込むあの感覚だけは、燃費でも積載量でも説明がつかない。
今日は、その話をしたい。オープンカーがおすすめだと言い切れる理由と、2026年のいま現実に手が届く一台を、国産から外車、安い中古まで並べていく。

オープンカーがおすすめだと言い切れる、たったひとつの理由


スペックの話から入るつもりはない。
最高出力も、0-100km/hも、オープンカーの本質からは少しずれている。
このクルマの価値は、数字の外側にある。

屋根を開けるとは、空をひとときだけ借りることだ。
借りた空の下では、光がダッシュボードを撫で、風が首筋を通り抜けていく。
夏の夕方なら、熱を含んだアスファルトの匂い。
秋なら、どこかで誰かが燃やした落ち葉の煙。
オープンカーは、季節を素肌で着るためのクルマなのだと思う。

クローズドのクルマは、外界から僕らを守ってくれる。
雨も、風も、騒音も、快適にシャットアウトする。
それは進化であり、優しさだ。
でも、その快適さと引き換えに、僕らは風の温度を忘れていく。

幌を畳むひと手間は、日常に栞を挟む仕草に似ている。
「ここから先は、いつもと違う時間だ」と、自分に合図を送る動作。
ボタンひとつ、あるいはレバーひとつ。
その一手間があるからこそ、走り出しの一瞬が特別になる。

屋根の構造にも、体験の違いがある。
布の幌、いわゆるソフトトップは、軽くて、開閉も速い。
畳んだときの後ろ姿にも、どこか色気が残る。
一方で、金属やハードな素材を電動で格納するリトラクタブルハードトップは、閉じれば静かで、防犯にも雨にも強い。
その代わり、少しだけ重く、荷室を譲る。
どちらが上ではない。屋根とどう付き合いたいかという、生き方の違いだ。

夜の走りも、また違う。
街灯の下を抜けるたびに、光と影が交互に頬を撫でていく。
トンネルに入れば、エキゾーストの反響が屋根のない車内を満たし、抜けた先で夜気がどっと流れ込む。
気温が数度下がる山あいでは、空気が湿った土と草の匂いに変わる。
クローズドのクルマなら、決して気づかない変化だ。
オープンカーは、走った道の記憶を、匂いと温度で刻んでいく。

正直なことを言えば、僕はオープンカーに合理性を求めたことがない。
求めているのは、風という、いちばん饒舌な同乗者だ。
黙って助手席に座り、走り出すたびに、その日の空気を全身で語ってくる。
このクルマに乗る意味を、僕はそこに見ている。

国産オープンカーのおすすめ現行と、いま買える現実


「屋根の開くクルマが欲しい」と誰かに相談されたら、僕はまず国産の現行車から話す。
新車で買えて、部品も出て、壊れても直せる。
最初の一台として、これほど心強い条件はない。

マツダ ロードスター/ロードスターRF

迷ったら、ロードスター。
この結論は、何年経っても揺らがない。
マツダの公式サイトを開けば、ソフトトップのロードスターと、電動格納式ハードトップのロードスターRFが、いまも堂々と並んでいる。
2026年6月には商品改良が予約開始され、新しい特別仕様車や新色も加わった。
価格はロードスターが約296万円から、RFが約385万円から。
6速MTを選べるのも、うれしい。

このクルマの背骨には、「人馬一体」という思想がある。
日本の馬術に着想を得たと言われるこの言葉を、初代NAの開発主査は繰り返し語った。
人とクルマが、一頭の馬のように呼吸を合わせる。
その哲学が、NAからNB、NC、そして現行NDまで、四代にわたって受け継がれてきた。

数字にも触れておく。
2000年、ロードスターは累計53万台あまりで、世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカーとしてギネスに認定された。
その後も記録を更新し続け、2016年には累計100万台に到達している。
Car and Driverの記事にも、その歩みが残っている。
これは、世界中の大人が「屋根を開ける歓び」に手を伸ばし続けた、その台数だ。

試乗した帰り道、僕は近所の田んぼ道でわざと幌を開けた。
初夏の風に、青い稲の匂いが混じっていた。
アクセルを軽く踏むだけで、エンジンの鼓動が背中に伝わってくる。
速さではない。この距離感だ。ロードスターがくれるのは。

屋根の選び方でも、性格が変わる。
ソフトトップのロードスターは、幌を手で畳めるほど軽い。
信号待ちのわずかな時間でも、空を借りられる身軽さがある。
一方のRFは、後方の一部だけが電動で格納されるタルガ的な構造で、閉じれば驚くほど静かだ。
高速を長く走る人や、屋根の造形にこだわる人には、RFの佇まいがよく似合う。
同じ名前でも、どちらの空と付き合うかで、選ぶ一台は変わってくる。

ダイハツ コペン──最終盤という現実

軽自動車で、屋根が開く。
それだけで、コペンは特別な存在だった。
電動格納ルーフ「アクティブトップ」を備え、樹脂外板を骨格に組む独自の構造で、外装の着せ替えまで楽しめた。

ただ、ここは正直に書かねばならない。
ダイハツの公式情報によれば、現行コペンは2026年8月末での生産終了が予告されている。
2026年7月のいまなら、まだ新車として注文できる。だが、それも最終盤だ。
後継として「K-OPEN」というコンセプトが公開されてはいるものの、市販の時期も仕様も、まだ何ひとつ確定していない。

だから、コペンをいま勧めるのは、少し切ない気持ちを伴う。
「欲しいなら、迷っている時間はそう長くない」。
そう言うしかないクルマが、目の前で幕を下ろそうとしている。
軽い車体に風を受けて走るあの感覚が、当たり前に新車で買える時代の、たしかな終わりの気配。

外車のオープンカーおすすめ──4人乗りから2シーターまで


「屋根が開くなら、後ろにも人を乗せたい」。
そんな声に応えられるのは、外車の得意分野だ。
2人乗りの純度を取るか、4人乗りの余裕を取るか。
ここでも、選択は生き方に似てくる。

MINIコンバーチブルと、BMW 4シリーズ カブリオレ

手が届きやすい輸入オープンなら、MINIのコンバーチブルが楽しい。
新世代モデルは電動ソフトトップを備え、MINI公式の価格表ではクーパーCが464万円から。
面白いのは、屋根を全開にしなくても、前だけ40センチほど開けてサンルーフのように使えること。
渋滞の途中でも、空の一部だけ借りられる。この気軽さは、都市で効いてくる。

本気で4人乗りのオープンを求めるなら、BMWの4シリーズ カブリオレだ。
BMWの公式ページによれば、キャンバス製のソフトトップは約18秒で開閉する。
価格帯は約820万円からと軽くはない。だが、直列6気筒を積むM440iで屋根を開ければ、後席にも風が回る。

先日、ディーラーで営業にこう尋ねた。
「4人乗りといっても、後席に本当に人が乗るんですか」。
彼は笑ってこう返した。

「荷物置きでもいいんです。屋根が開けば、それだけで正解ですから」

その割り切りが、僕は嫌いじゃない。
オープンカーの後席とは、そういう贅沢の置き場所なのだ。

BMW Z4とポルシェ718という、端境期

2シーターの純度を求める人には、宿題を渡すことになる。
BMW Z4のM40iは、直6ソフトトップの正統派だ。手動6速の設定さえある。
けれど、このZ4も2026年3月での生産終了が予定されている。
やはり、いま買える最終盤の一台なのだ。

ポルシェの718ボクスターは、さらに難しい局面にある。
Responseの報道などによれば、ガソリンエンジンの現行718は受注を終え、2026年中の生産終了へ向かっている。
次世代はEVになると言われるが、開発の遅れも伝えられ、登場時期は流動的だ。
「いま新車のガソリン718が確実に買えるか」と問われれば、端境期であり、断定はできない。
憧れを語ることはできても、無責任に「買える」とは書けない。それが、2026年の正直なところだ。

安いオープンカーの中古で始める──100万円台の現実


ここまで新車を並べてきたが、屋根を開ける歓びに、必ずしも数百万円はいらない。
中古市場には、驚くほど手頃なオープンが眠っている。
そして、安い個体には安いなりの理由が、必ずある。

最初の一台として僕が推したいのは、ロードスターのNC型だ。
2005年から2015年のこの世代は、いまや総額100万円前後から狙える。
状態のいい低走行車でも、100万円台の前半に収まることが多い。
2人乗りの現行を新車で買う前に、まずNCで屋根のある暮らしを試す。これは、賢い入口だと思う。

ダイハツのコペンも、中古なら手が届く。
2012年前後の個体なら、総額80万円台から120万円ほど。
BMWのZ4の中古(E85やE89)、メルセデスのSLK、アウディのTTロードスター、フィアットの500Cあたりも、数十万円から150万円前後で見つかる。
輸入車は車両が安くても維持で差が出るから、そこは覚悟が要る。

先日、行きつけの中古車屋の店主が、こんなことを言っていた。

「オープンは、開けない人ほど手放すのが早いんだ。開ける人は、一生手放さない」

言い得て妙だと思った。
中古を選ぶときは、前のオーナーが屋根を開けて生きていたかどうかを、車体から読み取りたい。
幌車なら、幌の擦れ、雨漏りの跡、内側のカビ。
電動ルーフなら、開閉の動きに引っかかりがないか。
そこに、そのクルマが過ごしてきた時間が滲んでいる。

相場より極端に安い個体には、理由がある。
事故歴、幌やルーフ機構の劣化、電装のトラブル。
安さに飛びつく前に、その理由を一つずつ確かめる。
それが、屋根のあるクルマと長く付き合うための、最初の作法だ。

憧れという別枠と、軽オープンの系譜


ここからは、少し夢の話をさせてほしい。
すでに新車では買えず、中古でも別格の値がつく、憧れのオープンたちだ。
手頃な中古とは、はっきり分けて考えたい一群。

ホンダのS2000は、その筆頭だ。
2009年に生産を終えたこのオープンは、いまや中古で80万円台から、上は500万円を超える個体まである。
9000回転まで許された自然吸気エンジンと、幌を開けて浴びる高回転の咆哮。
その体験に、時代が追いついて値がついた。もはや、走る資産のような扱いだ。

軽の世界にも、屋根を開ける歴史があった。
ホンダのS660は、軽で唯一のミッドシップ・オープン。
屋根は脱着式のロールトップで、外して助手席後ろに丸めて積む。
64馬力という上限のなかで、走りと開放を両立させた設計思想が美しい。
2022年に生産を終え、いまは中古で120万円から400万円台。高値を保ったままだ。

そして、忘れてはいけないのが「平成ABCトリオ」。
マツダAZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノ。
バブルの残り香がまだ漂っていた1991年から1992年、この三台が相次いで世に出た。
ガルウイングのAZ-1、8100回転まで回るビート、脱着ルーフのカプチーノ。
どれも屋根や天井をどこかで開け放ち、小さな車体に大きな夢を積んでいた。
いま思えば、あの時代の軽は、贅沢の意味を知っていた。

学生の頃、友人がビートに乗っていた。
幌を開けて二人で峠へ向かう夜、狭い車内は膝が触れそうなほど近くて、それでも屋根の上には満天の星があった。
MRの背後で回るエンジンの音が、後頭部から直に響いてくる。
速いクルマではなかった。だが、あの夜ほど風を近くに感じたことはない。
中古のみになったいまでも、AZ-1が170万円から350万円もの値で取引されるのは、あの体験に値札がつかないからだと思う。

これらを「おすすめ」と気軽には言えない。
価格も維持も、覚悟が要るからだ。
だが、屋根を開けるという文化が、これほど豊かに枝分かれしてきたことは、知っておいて損はない。
憧れは、いつか手が届く日のための、静かな燃料になる。

屋根を開けて走るということ──日本の四季と、少しの覚悟


ここまで景色のいい話ばかりしてきたから、現実にも触れておきたい。
オープンカーの本当の天井は、その日の空模様の中にある。
つまり、屋根を開けられるかどうかは、天気と季節が決める。

打ち明けると、僕は花粉症だ。
だから春先、いちばん風の気持ちいい季節に、ほとんど屋根を開けられない。
黄砂が飛ぶ日も、真夏の炎天下も、開ければ肌が悲鳴を上げる。
紫外線は容赦なく、突然の雨には毎回あわてる。
天気予報を、オープンに乗るようになってから、前より真剣に見るようになった。

幌の手入れも要る。
撥水剤を塗り、カビを防ぎ、擦れをいたわる。
屋根が布である以上、それは金属のボディより繊細だ。
維持費で言えば、輸入車の部品や機構の修理は、それなりの額になることも覚えておきたい。
国産の2人乗りなら、そこは比較的、現実的な範囲に収まる。

それでも、と思う。
屋根は雨をしのぐためだけのもの、という考え方が、いつのまにか当たり前になった。
効率で言えば、その通りなのだろう。
でも、屋根を開けられる日が年に何十日かしかないからこそ、その一日が特別になる。
不便を承知で開ける。その覚悟ごと、オープンカーという趣味なのだと思う。

朝、空が高く晴れた日。
仕事へ向かう前の十分だけ、遠回りをして屋根を開ける。
たったそれだけで、その日一日の色が、少し変わる。
君にも、きっとわかってもらえるはずだ。

よくある質問

最初の一台に、いちばんおすすめのオープンカーは?

予算と用途で変わる。新車で安心して長く乗るならマツダ ロードスター。屋根のある暮らしをまず安く試すなら、中古のロードスターNCが現実的だ。軽でよければ、生産最終盤のコペンも候補になる。いずれも、屋根を開ける歓びの入口として過不足がない。

4人乗りのオープンカーはあるの?

ある。現行ならBMW 4シリーズ カブリオレや、メルセデスのCLEカブリオレなどが代表格だ。ただし後席は割り切りが必要で、大人が長距離を快適に、とはいかない。「屋根が開く4人乗り」は、後席を荷物や小さな贅沢の置き場所と考えると幸せになれる。

オープンカーの維持費は、やっぱり高い?

クルマによる。幌の手入れという固有のコストはどのオープンにも付きまとうが、国産2人乗りなら維持は現実的な範囲だ。一方、輸入車は車両価格が安くても、ルーフ機構や電装の修理で差が出る。安い中古ほど、そこを見極めたい。

安い中古のオープンカーで、狙い目は?

ロードスターNC、ダイハツ コペン、BMW Z4の後期、メルセデスSLKあたりが、100万円台までで探しやすい。ただし相場より極端に安い個体には必ず理由がある。事故歴、幌やルーフの劣化、電装トラブル。その理由を一つずつ潰してから決めたい。

MTで乗れる新車のオープンカーは?

マツダ ロードスターは6速MTを選べる。生産最終盤ながら、BMW Z4のM40iにも手動変速の設定がある。屋根を開け、自分の手でギアを繋ぐ。この二つの歓びが重なる時間は、やはり格別だ。

まとめ


オープンカーは、非効率だ。
雨に弱く、花粉に負け、荷物も積めない。
それでも僕らが屋根を開けるのは、風の温度や、光の匂いや、季節そのものを、素肌で受け取りたいからだ。

2026年のいま、屋根の開くクルマは静かな端境期にある。
コペンもZ4も最終盤、ポルシェ718は次章を待つ。
だからこそ、ロードスターが変わらず新車で買えることの、ありがたさが際立つ。
安い中古から始める道も、憧れを温め続ける道も、どちらも間違いではない。

あなたは、最後に風を全身で浴びて走ったのは、いつだろう。
次に空が高く見えた日、屋根を開ける理由を、もう探さなくていい。
ただ、幌を畳めばいい。その先に、いつもと違う一日が待っている。

執筆:橘 譲二(たちばな・じょうじ)

情報ソース一覧

コメント

タイトルとURLをコピーしました