現行の日本向けプレリュードに、クラッチペダルを操作するMTの設定はない。変速機の公式表記は「電気式無段変速機」で、Honda S+ Shiftの8速は仮想の変速段だ。8段の実ギアを持つATや、3ペダルのMTと同じ機構ではない。
では、操る楽しさまで同じ結論で片づけていいのか。僕はそうは思わない。MTで自分の手足を使う楽しさと、電動化した車の反応を自分好みに選ぶ楽しさは、別々に評価できる。まず仕組みを正しく知り、その上で自分の好みと照らしたい。
2026年9月29日にHondaの日本向け主要諸元表とS+ Shift技術解説を確認した。以下は公式資料に基づく説明であり、筆者による試乗評価や、将来のMT追加を予告する記事ではない。
アイキャッチは、公式の実車画像を参考に制作したAI生成イメージです。実際の試乗写真ではなく、細部や色の正確な確認にはメーカーの写真をご覧ください。
MT、電気式無段変速機、仮想8速を分けて考える
| 言葉 | 現行プレリュードでの意味 |
|---|---|
| MT | 3ペダルの手動変速機は現行設定にない |
| 電気式無段変速機 | Hondaが主要諸元表に記載する変速機の形式 |
| Honda S+ Shift | 仮想の変速段に合わせてエンジン回転や駆動力などを制御する機能 |
| 8速 | S+ Shiftで設定する仮想ギア段。実物の8段ATを示すものではない |
| パドル操作 | S+ Shift使用時は変速操作、オフ時は減速セレクターとして機能 |
出典:Honda主要諸元表、Honda S+ Shift技術解説。パドルを備えることだけを根拠に「MT搭載」と呼ぶのは不正確だ。
電気式無段変速機という名前から、ベルトで変速比を変える一般的なCVTと同じ感覚を想像する人もいるだろう。しかしe:HEVは、エンジンと発電用・走行用モーターを組み合わせて走行状態を切り替える。名称だけから、加速時の反応まで決めつけることはできない。
S+ Shiftは音だけを変える装置ではない
Hondaの技術資料では、仮想の段に応じてエンジン回転数を変えることに加え、駆動力も制御すると説明されている。発電用モーターへの負荷を調整してエンジン回転を下げるなど、実際の動力系の動きが関わる。車内の音とメーターの演出も、その反応と組み合わせる構成だ。
そのため「スピーカーで音を足しただけ」という説明では足りない。一方で、実際の歯車を選び、クラッチをつなぐMTの操作が再現されるわけでもない。この二つを分けると、S+ Shiftが何を狙うのかが見えやすくなる。
僕はこの工夫を、燃費のために電動化した車へ、運転者が感じ取れるリズムを加える試みと読む。ただし、それが自分にとって自然か、楽しいかは試乗で確かめたい部分だ。資料を読んだ段階で「DCTと完全に同じ感覚」と断言することはできない。
ドライブモードとパドルは、組み合わせて確認する
プレリュードにはSPORT、GT、Comfortと、自分で各特性を調整できるIndividualが用意される。Hondaの走行性能ページでは、ドライブモードとS+ Shiftの組み合わせが説明されている。
S+ Shiftを切ると、パドルは減速セレクターとして働く。同じスイッチを触っていても、何を変えているかが違う。減速の強さを選ぶ操作を、機械式MTで低いギアへ入れる操作と、そのまま同一視しないようにしよう。
試乗時間が短いなら、いきなりすべての設定を変えるより、一つのモードでS+ Shiftのオン・オフを比較するほうが違いを追いやすい。そのあとで、普段使う穏やかな設定と、走りを楽しみたい設定を比べたい。
試乗で見るなら、速さより先にこの4点
- 発進や低速で、アクセル操作と車の動きが合わせやすいか。
- 安全な範囲で加速したとき、エンジン音と速度の上がり方に納得できるか。
- パドルを操作したとき、期待したタイミングで反応を感じられるか。
- S+ Shiftを切って静かに走りたい場面でも、好みに合うか。
比較は交通状況と販売店の案内に従って行う。限界走行をしなくても、毎日の操作との相性は確かめられる。前席の姿勢や視界が合わなければ、変速の演出だけで長く満足するのは難しいだろう。
「MTではないから対象外」という好みはあっていい。クラッチを操作したい人の条件を、別の機能が必ず埋めるわけではない。一方、2ペダルで扱いやすく、操作に反応するクーペを探している人なら、機構を知ったうえで試す価値はあると考える。
将来のMT追加を、購入判断の前提にしない
今回確認した公式の日本向けラインアップには、MT仕様は掲載されていない。将来の追加を示す正式発表も、本稿の根拠資料にはない。「待てば必ずMTが出る」として購入時期を決めることは勧められない。
現在選べる内容はプレリュードの価格・装備、出力の意味は燃費とエンジン・モーターの数値で確認できる。好きな運転の形がどこにあるかを見失わず、いま買える車そのものを評価したい。
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