【日産】新型エルグランドの全貌に迫る!次期モデルのフルモデルチェンジ概要と走りの真価

日産新型エルグランドのフロントビュー。組子パターンのグリルと風格あるシルエットが夜明けの光に照らされているシーン 新車情報

16年という歳月は、一つの時代を塗り替えるには十分すぎる時間だ。日産が誇るフラッグシップミニバン、次期「新型エルグランド」が、ついに2026年7月16日にフルモデルチェンジを果たし発売される。全高1,975mmへと大型化されたボディに、第3世代「e-POWER」と電動4WD「e-4ORCE」を全車標準搭載。ライバルであるアルファードに真っ向から挑むこのクルマは、単なる移動空間ではない。ドライバーの心に再び火を灯す、走りの魂を宿したミニバンの全貌に迫ろう。

次期「新型エルグランド」とは?16年ぶりのフルモデルチェンジが意味するもの

ステアリングを切る角度は、人生の選択と似ているのかもしれない。

かつて、私――橘 譲二が18歳でS13シルビアを手に入れ、夜な夜なサニータウンの峠を攻めていた頃。路面に吸い付くようなグリップ感覚だけが、私にとっての世界のすべてだった。絶対的な速さを求め、S15シルビア、そしてR32スカイラインGT-Rへと乗り継ぐ中で、私は「走る意味」を常に問い続けてきた。

そんな私にとって、「ミニバン」というカテゴリーは、長らく対極にある存在だった。背が高く、重く、家族やゲストを快適に運ぶための箱。そこに、ドライバーとクルマが対話する余地などあるのだろうか、と。

しかし、2026年7月16日に発売が決定した日産・次期「新型エルグランド(型式:E53)」のスペックシートを眺めていると、かつてガレージで油にまみれていた元自動車整備士の父が教えてくれた、メカニズムの奥深さが蘇ってくるのだ。

現行モデル(E52型)が2010年に登場して以来、実に16年ぶりのフルモデルチェンジ。

日産は、長らくトヨタ・アルファード/ヴェルファイアの後塵を拝してきたこの市場で、単なる「広い箱」を作ることを良しとしなかった。彼らが選んだのは、最新の電動化技術と四輪制御技術を惜しみなく投入し、「走るプライベートラウンジ」を作り上げることだった。

2025年10月の「ジャパンモビリティショー2025」で市販モデルが公開され、すでに2026年5月28日から先行予約が開始されている。

販売店には、かつてのエルグランドの輝きを知るオーナーだけでなく、アルファードからの乗り換えを検討する層も殺到しているという。これは単なる新車発表ではない。日産のプライドを賭けた、逆襲の狼煙(のろし)である。


決別と進化。なぜV6エンジンを捨て「e-POWER」を選んだのか?

かつてのエルグランドといえば、大排気量のV6エンジンがもたらす豪快な加速が魅力の一つだった。私が23歳でR32スカイラインGT-Rをフルローンで購入した際、その圧倒的なエンジンフィールに魂を奪われたように、内燃機関の咆哮には抗いがたい魅力がある。

だが、日産は新型エルグランドにおいて、そのV6エンジンとの決別を選択した。

全グレードに搭載されるのは、直列3気筒1.5Lの「VCターボ(可変圧縮比)エンジン」を発電専用とし、モーターのみで駆動する第3世代「e-POWER」である。ノーマルガソリンエンジンや、2WD(FF)の設定すら存在しない。

この決断の裏にあるのは、圧倒的な「静粛性」と「効率」の追求だ。

搭載される1.5L VCターボエンジン(ZR15DDTe型)は、日産独自の「STARC燃焼コンセプト」により、熱効率42%という驚異的な数値を達成している。

モーター、発電機、インバーター、減速機、増速機の5つを1つのケースに統合した「5-in-1」パワートレインユニットにより、従来比で音と振動を最大5.6dBも低減。エンジンはあくまで黒衣(くろご)に徹し、車内には図書館のような静けさがもたらされる。

そして、モーター駆動がもたらすシステム最大トルクは500Nm(51kg-m)以上。

これは、ノーマルのガソリンエンジンに換算すれば4.5Lクラスに相当する怪力である。アクセルを踏み込んだ瞬間、ターボラグなど存在しない、リニアで暴力的なまでの加速が立ち上がる。

あの頃のターボラグは、未来への期待を溜める時間だった。しかし、このe-POWERがもたらす無音の加速は、ドライバーの思考と直結した「現在進行形の速さ」なのだ。

さらに、このダウンサイジングは経済性という大きな果実をもたらした。

現行の3.5L V6モデルがWLTCモードで8.7km/Lであったのに対し、新型はなんと16.8km/L〜20km/L台という驚異的な燃費を叩き出す。自動車税も1.5L以下の区分(年間30,500円)に収まる。このロジカルな進化には、整備士だった父もきっと舌を巻くことだろう。


e-4ORCEがもたらす「対話」。ミニバンに走る歓びはあるか?

私が新型エルグランドに最も惹かれた理由は、パワートレインそのものよりも、足回りのメカニズムにある。全車に標準装備される電動4WDシステム「e-4ORCE」だ。

前後2つのモーターを配置し、4輪の駆動力を1/10000秒単位で緻密に制御する。

かつて私が乗っていたR32 GT-RのアテーサE-TSは、後輪の空転を検知して前輪にトルクを配分する機械的なロマンがあった。対してこのe-4ORCEは、はるかに高度なデジタル制御によって車体を安定させる。

加速時や減速時のピッチング(前後の揺れ)をモーターの回生力で打ち消し、乗員の頭の揺れを最小限に抑える。さらに、インテリジェントダイナミックサスペンションと呼ばれる可変ショックアブソーバーが、路面状況やドライブモード(コンフォートなど全6種類)に応じて減衰力を自動調整するのだ。

ミニバン特有の、コーナーでよっこいしょとロールする「もっさり感」がない。

テストコースで試乗したジャーナリストたちの声によれば、背が高く重いボディでありながら、4輪がピタリと路面に吸い付き、ステアリング操作に対して素直にノーズの向きを変えるという。高速道路で横風にあおられても、姿勢を乱さない。

これは、クルマとドライバーが対話できるミニバンであることの証明だ。ポルシェ 981ケイマンで人馬一体の歓びを知り、今はR32 GT-Rでクルマとの対話を楽しんでいる私にとって、この「運転が退屈ではないミニバン」という事実は、ひとつの希望である。


宿命のライバル「アルファード」との比較。新型エルグランドの価格帯

Lサイズミニバンを語る上で、トヨタの「絶対王者」アルファードの存在を避けて通ることはできない。実際のところ、両車を比較してどちらが「買い」なのか。

新型エルグランドのグレード構成は、非常にシンプルだ。
標準グレードの「e-POWER X e-4ORCE(以下X)」と、上級グレードの「e-POWER G e-4ORCE(以下G)」の2種類。

価格は、「X」が689万7,000円(税込)。
上級の「G」は757万9,000円(税込)となっている。

ここで、アルファードの売れ筋グレード「ハイブリッドZ E-Four(4WD)」と比較してみよう。

比較項目 新型エルグランド「X」 アルファード「ハイブリッドZ E-Four」
車両本体価格 689万7,000円 657万円
パワートレイン 1.5L VCターボ+e-POWER (340ps相当) 2.5Lハイブリッド (システム約250ps)
駆動方式 e-4ORCE (電動4WD) E-Four (電気式4WD)
燃費 (WLTCモード) 16.8km/L (Xグレード) 17.4〜18.0km/L
全高 1,975mm 1,935mm
2列目シート仕様 セパレートシート エグゼクティブパワーシート

価格だけを見れば、新型エルグランドの「X」は、アルファードの「ハイブリッドZ」よりも約32万7,000円高い設定だ。

さらに、アルファードでは標準装備となっているインフォテイメントシステムやETC2.0、100V・1500W電源コンセントなどが、エルグランドの「X」ではメーカーオプション(約35万円相当)となっている。

つまり、実質的な装備を揃えると、エルグランドの方が40万円ほど割高になる計算だ。

加えて、2列目シートの豪華さでも明確な違いがある。アルファードが固定式アームレストを備えた「エグゼクティブパワーシート」を採用しているのに対し、エルグランドの「X」は実用性を重視した一般的なセパレートシートに留まる。

「王道の豪華さ」を求めるのであれば、やはりアルファードに軍配が上がるだろう。販売台数の規模を生かしたコストダウンの恩恵は伊達ではない。

しかし、エルグランドにはその価格差を補って余りある「走り」の質がある。

最高出力340ps相当という圧倒的な動力性能と、e-4ORCEによる類まれなる走行安定性。もしあなたが、かつてスポーツカーに情熱を注ぎ、今は家族のためにミニバンを選ばざるを得ないのだとしたら。アルファードの穏やかな運転感覚では物足りなさを感じるのであれば、この40万円は「ドライバーとしての矜持」を保つための正当な対価と言えるのではないだろうか。

※画像はAIによるイメージ

走るプライベートラウンジ。内装デザインと「引き算の美」

新型エルグランドのデザインコンセプトは、「The private MAGLEV(私的なリニアモーターカー)」である。

過剰なメッキ装飾で威圧感を与えるのではなく、日本の美意識に基づいた「引き算の美」を体現している。フロントグリルには伝統工芸「組子(くみこ)」をモチーフにしたパターンを採用し、ボディサイドは日本庭園の「間」と「整」を表現したクリーンな面構成だ。

そして何より注目すべきは、そのサイズである。

現行モデルで「背が低く室内が狭い」と批判された反省から、全高を一気に160mm引き上げ、1,975mmとした。これはアルファードの1,935mmを凌駕し、クラストップレベルの室内高を確保している。全幅も1,895mmへと拡大され、堂々たるプロポーションを手に入れた。

インテリアに目を向ければ、そこはまさに高級ラウンジだ。

日産の国内モデル初となる「14.3インチ大画面統合型インターフェースディスプレイ」が鎮座し、インストルメントパネルからドアへと続く間接照明は最大64色に変化する。

上位グレードの「G」では、映画館さながらの臨場感を生み出す「BOSE 22スピーカープレミアムサウンドシステム」や、プロパイロット2.0(高速道路でのハンズオフ走行支援)が選択可能だ。

シート表皮には「紫檀(シタン)」と呼ばれる、日本の気高さを象徴する紫と青を基調としたカラーが用意されており、ドアトリムのキルティングはエクステリアの組子パターンとリンクしている。

また、現行モデルの弱点であった「3列目シートの床下収納」を廃止し、サイド跳ね上げ式に変更したことで、荷室の深さが確保され実用性も大幅に向上している。


グレード構成と選び方。リセールバリューの壁を越えられるか

さて、購入を検討する際のアドバイスだが、もし予算が許すのであれば、私は迷わず上級グレードの「G」をおすすめする。

先述した通り、「X」にインフォテイメントシステムなどの必須オプション(約35万円)を追加するくらいなら、最初からそれらが標準装備され、さらにシートベンチレーションや後席モニターなどが付く「G(757万9,000円)」を選んだ方が満足度は圧倒的に高い。

そして何より、「リセールバリュー(数年後の売却価値)」の観点からも、上級グレードの方が値落ちしにくい傾向にあるからだ。

トヨタの営業マンがエルグランドに対して「脅威ではない」と余裕を見せる最大の理由は、アルファードの驚異的なリセールバリューにある。「3年後でも新車価格の70%前後」という実績は、ローンを組む際の残価設定において圧倒的に有利に働く。

私が20代の頃、フルローンでR32を買い、ブローして莫大な借金だけが残ったあの絶望感を思えば、リセールバリューという名の「安心の担保」は確かに魅力的だ。

新型エルグランドが真の意味で王者を脅かす存在になるには、このリセールバリューの壁をどう乗り越えるか、つまり「市場でのブランド価値」をどう確立するかにかかっている。


記者(橘譲二)の考察:ポルシェからGT-Rへと乗り継いだ私が思うこと

私はこの記事を書くにあたり、何度も自問自答した。
なぜ日産は、ここまで「走り」にこだわったミニバンを作ったのか、と。

ビジネスとして割り切るなら、アルファードの長所を徹底的にコピーし、少しだけ安く売るのが正解だったはずだ。しかし日産は、コストのかかるe-POWERとe-4ORCEを全車標準にし、わざわざ専用のサスペンションまで開発した。

その答えは、おそらく「意地」だ。

「技術の日産」という言葉は、決して過去の遺物ではない。
ミニバンであっても、ステアリングを握る人間を退屈させない。交差点をひとつ曲がるだけで、クルマの四輪がどう動いているのかをドライバーに感じさせる。

「アルヴェルは街に溢れすぎているから、違う個性が欲しい」という消極的な理由だけでエルグランドを選ぶのはもったいない。

このクルマは、「家族を快適に乗せること」と「自分が運転を楽しむこと」を、高い次元で両立させようとした野心作なのだ。かつてスポーツカーの危うさに魅了された私のような人間にこそ、この完成された電動制御の「対話」を味わってみてほしい。

絶対的な速さには相応の覚悟が必要だ。
だが、このエルグランドが提供する速さと安定性は、家族の笑顔という最高の結果を伴って、ドライバーの心を満たしてくれるはずだ。


まとめ:スペック表の数字だけでは語れない、魂の在り処

2026年7月16日に発売される日産・新型エルグランドは、16年という沈黙を破るにふさわしい仕上がりだ。

全高1,975mmの堂々たるボディに、日本の美意識を散りばめたデザイン。第3世代e-POWERによる圧倒的な静粛性と燃費、そしてe-4ORCEがもたらす極上の走行安定性。

アルファードと比較して価格設定はやや強気であり、リセールバリューという高い壁も存在する。だが、クルマを単なる「資産」や「移動手段」としてではなく、日常の中で共に走るパートナーとして捉えるならば、新型エルグランドの持つ「走りの質感」は、間違いなくあなたの心を揺さぶるだろう。

試乗車が配車される2026年7月下旬。ぜひ、そのステアリングを握って確かめてほしい。そこには、スペック表には載っていない、日産の「魂の在り処」があるはずだ。


よくある質問

フルモデルチェンジした新型エルグランドの発売日はいつ?

2026年5月28日から予約受注が開始されており、正式発売日は2026年7月16日(木)となります。販売店での試乗は7月下旬頃から可能になる見込みです。

次期モデルにガソリン車はある?

ありません。新型エルグランドは、発電用の1.5L VCターボエンジンと駆動用モーターを組み合わせた「e-POWER(ハイブリッド)」と、電動4WD「e-4ORCE」の組み合わせのみとなります。

トヨタのアルファードと比べてどうなの?

豪華さやリセールバリュー、価格の安さ(エントリーグレード比較)ではアルファードが有利です。一方で、新型エルグランドは「e-POWER」による圧倒的な動力性能と、「e-4ORCE」による走行安定性、静粛性で勝っており、走りの質を重視する方におすすめです。

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