スバル WRX STI S210 は、東京オートサロン2025で初公開されたSTIのコンプリートカーで、FA24型2.4Lターボが生む最高出力300PS、車両本体価格870万円(税込)、限定500台の抽選販売モデルです。
まずは結論から。この記事で知りたいであろう数字を先に並べておきます。
- ベース車:WRX S4 STI Sport R EX
- エンジン:FA24型 2.4L 水平対向4気筒ターボ
- 馬力:300PS/最大トルク375Nm(38.2kgm)
- 新車価格:870万円(税込)
- 生産台数:日本国内限定500台(抽選販売)
- 価格正式発表:2025年5月22日
ここから先は、その数字の「意味」を、一台のクルマと長く付き合ってきた書き手の視点で掘り下げていきます。スペック表の行間にこそ、S210の本当の姿が宿っているからです。
スバルS210とは?|東京オートサロン2025で公開されたSTI最高峰モデル
S210とは、スバルのモータースポーツ統括会社STI(スバルテクニカインターナショナル)が手がけた、WRX S4ベースのコンプリートカーです。2025年1月10日、東京オートサロン2025で初公開されました。
「S」の称号は、STIが最高峰のコンプリートカーにだけ与えてきた特別な記号です。206、207、208、そして今回の210へ。数字の連なりは、そのまま走りへの執念の歴史でもあります。
ベースとなったのは、WRX S4 STI Sport R EX。だが、STIはそこで止まらない。エンジン、トランスミッション、足回り、車体──そのすべてに専用チューニングを施し、ニュルブルクリンク24時間レースで培った知見を注ぎ込んでいます。
開発を率いたのは、STI開発副本部長の高津益夫氏。掲げたテーマは「誰もが、何処でも意のままに操れる究極のコンプリートカー」でした。
つまりS210は、単に速いだけの限定車ではありません。レースカー「SUBARU WRX NBR CHALLENGE」直系の走りを、公道で味わえるかたちに翻訳した一台。筆者としては、ここがS210最大の価値だと考えています。
数字を並べただけでは語れない。ステアリングを握り、アクセルを踏み込んだ瞬間にわかる──“この車には、意思がある”と。STIはまたひとつ、我々に問いかけてくる。「お前は、まだ走る覚悟があるか?」と。
S210のスペックを徹底解説|エンジン・寸法・重量一覧
S210の主要スペックを、プロトタイプ公開時の開発目標値を基に一覧でまとめます。検索で「s210 スペック」と打ち込んだあなたが、まず確認したい数字がここにあります。
| 項目 | 数値 |
|—|—|
| 全長 | 4,690mm |
| 全幅 | 1,845mm |
| 全高 | 1,465mm |
| ホイールベース | 2,675mm |
| 車両重量 | 1,630kg(開発目標値) |
| エンジン | FA24型 2.4L 水平対向4気筒 DOHC 直噴ターボ |
| 最高出力 | 300PS(221kW)/5,700rpm |
| 最大トルク | 375Nm(38.2kgm)/2,000〜5,600rpm |
| トランスミッション | スバルパフォーマンストランスミッション(8速マニュアルモード付) |
| 駆動方式 | AWD(フロント縦置き4WD・STIチューン) |
| タイヤサイズ | 255/35R19 |
| 乗車定員 | 5名 |
注目したいのは、全幅1,845mmというワイドなボディと、255幅という太いタイヤ。これは標準的なWRX S4よりも踏ん張りを効かせた、明確に「走る」ための設定です。
パワーウェイトレシオは約5.6kg/PS。数字としては突出して過激ではありません。だが、筆者が思うのは、S210の本質は最高数値の大きさではなく「数字の使い切りやすさ」にあるということです。
スペック表で殴り合う時代に、あえて「全域で扱える300PS」を選んだ。そこにSTIの哲学が透けて見えます。
S210の馬力は?|FA24型300PSの中身と出力特性
S210の馬力は300PS(221kW)、最大トルクは375Nm(38.2kgm)です。これは開発目標値として公表された数字です。
この“鼓動”を担うのは、FA24型──2.4リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジン。WRX S4のFA24をベースに、STIが吸排気からECUまで全面的に手を入れています。
具体的には、エアクリーナーや吸気ダクト、ターボ前ダクトを新開発。排気側には大口径テールパイプを備えた低背圧パフォーマンスマフラーと、砲弾型チャンバーを持つ専用エキゾーストパイプを採用し、吸排気抵抗を低減しました。
そのうえでECUを専用チューニング。点火やデュアルAVCS、電動ウェイストゲートの制御を作り込み、アクセル操作に対する鋭くリニアなトルクレスポンスを実現しています。
特筆すべきは、その“出力特性”にあります。2,000rpmという低回転域から立ち上がる厚みのあるトルクは、まるでドライバーの心を読み取るように、タイミングよく背中を押してくる。踏めば応える。迷えば揺れる。
このエンジンはただ回るだけじゃない。「走る」という感情に、呼応する。
CVTと聞けば、MT派の僕らはつい身構えるかもしれない。だが、S210に搭載された専用制御のスバルパフォーマンストランスミッションは、その“固定観念”をぶち壊す。Sシリーズとして初の2ペダルモデルです。
8速マニュアルモードは、ギアチェンジというよりも“選択”に近い。シフトアップひとつにしても、遅れがないどころか、こちらの意図を先回りして動いてくる。
これはもう変速じゃない。「対話」だ。 マシンと心がリンクする、あの一体感が、ここにはある。
S210の新車価格はいくら?|870万円(税込)の内訳と発表時期
S210の新車価格は、車両本体価格870万円(税込)です。価格は2025年5月22日にスバル公式で正式発表されました。
ベースとなるWRX S4 STI Sport R EXが502万7,000円(税込)であることを踏まえると、その差は約367万円。価格にしておよそ1.7倍に達します。
「高い」と感じるか、「妥当」と感じるか。ここで問われるのは、価格そのものではなく「価値」だと筆者は考えます。
実際、ひと回り大きなBMW M3が1,400万円超、メルセデスAMG C43が1,200万円台であることを思えば、255幅タイヤ・ブレンボ6ポッド・STI専用シャシーをフル装備したコンプリートカーとして、870万円という数字は決して非現実的ではありません。
300PSの数字でも、専用ホイールでもない。ハンドルを握ったとき、自分の内側がどう震えるか──その“感情の価値”が、S210の真のプライスだ。
そしてもし、その500分の1に名を刻めたなら、あなたはきっとこう思うだろう。「このクルマは、最初から俺のもとに来る運命だった」と。
S210の購入方法|限定500台・抽選販売の流れ
S210は日本国内限定500台で、抽選販売となります。誰でも先着で買えるクルマではありません。
価格の正式発表とともに、2025年5月22日(木)から抽選エントリーが開始されました。購入を希望する人は、最寄りのスバル販売店でエントリーし、その後の抽選で当選者が決定する流れです。
スバルの限定車は、過去にも激戦が常態化してきました。500台限定だった「WRX S4 STI Sport♯」、即日完売した「WRX STI TYPE RA-R」、抽選倍率が24倍に達した「EJ20ファイナルエディション」──歴史がそれを物語っています。
つまり、このクルマを手にできるかどうかは、金額やスピードではなく、“縁”に委ねられるということ。数あるスポーツカーの中で、この一台と巡り合える確率は、まさに“運命”に近い。
なお、価格・在庫・抽選条件などは時期によって変わる可能性があります。最新の情報は必ずスバル公式サイトや販売店で確認してください。
専用装備とデザイン|内外装に宿る“走りへの哲学”
S210の存在感は、数字では計れません。それは、ただ速く走るための“機械”ではなく、走ることの意味をかたちにした答えだからです。
外装でまず目を奪われるのは、STI製ドライカーボン製のリヤスポイラー。空力装置でありながら、そこには美しさすら宿ります。フロントアンダースポイラー、サイドアンダースカート、リヤディフューザーまで、すべてが「走る」ための機能に徹し、それでいて一切の無駄がない。
ボディカラーは、原稿執筆時点で次の5色が用意されています。
- WRブルー・パール
- マグネタイトグレー・メタリック
- セラミックホワイト
- クリスタルブラック・シリカ
- サンライズイエロー(有償色/50台限定)
なかでも有償色のサンライズイエローは、わずか50台限定。500台のなかのさらに50台という希少さは、それ自体がひとつの“称号”だと筆者は感じます。
足を止めて見てほしいのが、ブレーキとホイールです。フロントにはブレンボ製モノブロック対向6ポッドキャリパー(レッド塗装)と18インチドリルドディスクローター。足元はSTI製フレキシブルパフォーマンスホイールで、前後で形状を変えるという凝りようです。
インテリアもまた、妥協がない。RECARO製カーボンバックレストのフロントシートは、まるで“走るための鎧”だ。ナッパレザーの触感、身体を包み込む形状、8ウェイの細やかな調整機能。長距離でも疲れない。いや、走ること自体が癒しになる。
そしてセンターコンソールに刻まれた、S210専用のシリアルナンバープレート。量産ではない、機械ではない──「あなただけの一台」であることを、静かに、しかし力強く物語っています。
シャシーとサスペンション技術|STIコンプリートカーの底力
ステアリングを切った瞬間、そのクルマが何を目指しているのかがわかる。S210が追い求めたのは、限界ギリギリの数字じゃない。「心で感じる走りの質」だった。
足回りには、ZF製の電子制御ダンパーと専用セッティングのコイルスプリング。タイヤは255/35R19のミシュラン Pilot Sport 4Sが静かに構えます。
だが、この車が他と違うのは、数字に現れない“接地感”です。STI独自のフレキシブルドロースティフナーやフレキシブルドロータワーバー、専用のラテラルリンクセット、リヤスタビライザーブッシュがもたらすのは、ボディの単なる硬さではない。“しなやかな芯”だ。
車体が路面のうねりに優しく身を預け、そして瞬時に反応する。ドライバーの入力に応えるその挙動は、もはや金属の集合体ではない。
──そう、“生きている”のだ。運転席でハンドルを握れば、車がこちらの意図を先に察するような一体感に包まれる。
自動車誌の試乗レポートでも、土砂降りのウェット路面で相当のペースでコーナーをクリアできたと評されています。クリッピングからアクセル全開を楽しめ、ブレーキングを深く取っても不安がない──国産トップレベルと評されるシャシー性能は、伊達ではありません。
それは、昔のR32 GT-Rのような“重たい対話”とは違う。もっと深く、もっと繊細で、「信頼」に近い感覚だ。
WRX S4 STI Sport R EXとの違い|比較で見えるS210の“本質”
「WRX S4 STI Sport R EX」と「S210」。両者の違いを数字で並べれば、確かに見えてくるものがあります。
| 項目 | WRX S4 STI Sport R EX | S210 |
|—|—|—|
| 最高出力 | 約275PS級 | 300PS |
| 価格(税込) | 502万7,000円 | 870万円 |
| ブレーキ | 標準キャリパー | ブレンボ6ポッド/18インチ |
| タイヤ | 標準サイズ | 255/35R19 Pilot Sport 4S |
| ダンパー | 電子制御 | ZF製専用電子制御+専用スプリング |
| 生産 | カタログモデル | 限定500台・抽選 |
数字の差は、出力、サスペンション、制御、構成部品の一つひとつが、より鋭く、より専用に磨き上げられていることを示しています。
だが──本当に違うのは、その“奥にある気配”だと筆者は感じます。S4は万能だ。誰でも安心して速く走れる。一方のS210は、その安心感を保ったまま、ドライバーにもう一段深く問いかけてくる。
峠で感じる、わずかな路面の変化。アクセルオンでのリアの沈み込み。カーブの途中で“踏めるかどうか”を問われる感触。──それは、かつて僕がR32 GT-Rで味わった“危うさ”に、どこか似ている。
S4が「正解を出してくれるクルマ」だとすれば、S210は「あなたの答えを引き出すクルマ」だ。同じFA24を積みながら、性格はここまで変わる。これが、コンプリートカーという作法なのだと思います。
海外の反応とスバルファンの声|S210が世界で注目される理由
S210の存在は、国境を越えてスバリストたちの心を震わせています。日本で生まれたこの特別なマシンは、海外のファンにとっても“走りへの回帰”の象徴になりつつあります。
reddit、YouTube、X(旧Twitter)などのSNSでは、STIが帰ってきたことへの歓迎の声や、世界展開を望む声が数多く見られます。スペックへの称賛というより、「ドライバーズカーをまだ作り続けてくれた」ことへの感謝に近い熱量です。
一方で、S210がCVT(スバルパフォーマンストランスミッション)であることに、伝統的なMT派からは戸惑いの声もあります。「キャラクター的にはMTが理想では」という意見は、確かに筋が通っています。
しかし、実際にステアリングを握った試乗記の多くは、レスポンスの良さを評価しています。低回転のトルクを使って走らせる変速制御は、CVTという言葉から連想する曖昧さとは別物だ、という声が目立ちます。
筆者としては、この賛否そのものがS210の“熱”の証だと感じます。 どうでもいいクルマに、人はここまで議論しません。
考察|なぜ今、Sシリーズが2ペダルで蘇ったのか(私見)
ここからは、一台のクルマと長く付き合ってきた書き手としての私見です。
S210が「2ペダル=CVT」を選んだことは、Sシリーズの歴史において小さくない転換点だと考えています。S208まで続いたMTの系譜を断ち、STIはあえて自動変速に未来を託した。
その背景には、STIがスーパー耐久でCVT車両を走らせ、市販車へのフィードバックを探ってきた事実があります。レースの現場で鍛えた制御を、量産コンプリートカーに落とし込む──その第一歩がS210だと見るのが自然でしょう。
個人的には、これは「速さの誇示」から「扱い切れる速さ」への、STIの価値観のシフトだと受け止めています。最高出力を限界まで引き上げる時代から、誰もが意のままに操れることを最高峰の証とする時代へ。
そして今後の見通しとして、S210で得た2ペダル・コンプリートカーのノウハウは、次のSシリーズや限定車に確実に受け継がれていくはずです。870万円という価格と500台という台数が示すのは、スバルが高付加価値の限定モデルに本気で取り組んでいるという経営姿勢でもあります。
もちろん、これらはあくまで筆者の見立てです。確定情報は今後の公式発表を待つ必要があります。ただ、S210が「ひとつの分岐点」になることは、ほぼ間違いないと考えています。
まとめ|数字を超えた“魂の一台”としてのS210
スバル WRX STI S210は、FA24型300PS、車両価格870万円(税込)、限定500台・抽選販売という、希少かつ濃密な一台です。
ベースはWRX S4 STI Sport R EX。エンジン、ミッション、足回り、ブレーキ、ボディまでをSTIが磨き上げ、ニュルブルクリンク24時間レース直系の走りを公道へ翻訳しました。
だが、僕の心を掴んで離さなかったのは、その完璧さの向こうにある“未完成の余白”だった。ちょっとしたクセ。路面に敏感な足。時にヒヤリとさせるリアの動き。それらはすべて、ドライバーを試し、呼び覚ます。
思えば僕たちが青春を捧げたR32 GT-RやS15シルビアにも、同じ“危うさ”があった。速さではなく、手応えを求めていたあの頃。S210は、その記憶を令和の時代に静かに、でも確かに呼び起こしてくれる。
スペックを確認しに来たあなたへ。最後に伝えたいのは、数字の先にこそ、このクルマの本当の答えがあるということです。S210は、忘れかけていた“走る理由”を思い出させてくれる、魂の一台だ。
よくある質問(FAQ)
S210の馬力はどれくらいですか?
最高出力300PS(221kW)/5,700rpm、最大トルク375Nm(38.2kgm)/2,000〜5,600rpmです。FA24型2.4Lターボを、STIが吸排気とECUまで専用チューニングして実現しています。
S210の新車価格はいくらですか?
車両本体価格は870万円(税込)です。2025年5月22日に正式発表されました。ベース車のWRX S4 STI Sport R EX(502万7,000円)より約367万円高い設定です。
S210は何台限定で、どうやって買えますか?
日本国内限定500台で、抽選販売です。2025年5月22日から抽選エントリーが始まり、スバル販売店でのエントリーを経て当選者が決まります。最新の販売状況は公式での確認をおすすめします。
走ることの意味を、もう少しだけ言葉で辿りたくなったら。
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執筆:橘 譲二(たちばな・じょうじ)
【公式YouTube】橘譲二の走り語りラジオ
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