結論から申し上げると、現在販売されている新型プレリュードにMT(マニュアル)の設定はありません。しかし、ホンダはクラッチペダルを無くす代わりに、最新技術「Honda S+ Shift」によって全く新しい形での“操る喜び”を私たちに提示しています。
復活のファンファーレと、3ペダル不在という現実
2025年9月5日。あの名が、実に24年ぶりに日本の公道へ帰ってきた。
ホンダ・プレリュード。
かつて「デートカー」として一世を風靡し、世界初の4WS(四輪操舵)を搭載するなど、ホンダの技術と若者の憧れを牽引してきたスペシャリティクーペの復活である。
流麗で美しいプロポーションを見た瞬間、かつてクルマに熱狂した私たちの胸は確かに高鳴った。
しかし、発表されたスペック表を食い入るように見つめた多くのエンスージアストたちは、ある一つの事実の前で立ち止まったのではないだろうか。
トランスミッションの欄に、「MT(マニュアル)」の文字がないのである。
用意されたのは、2.0Lの直噴エンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドシステム「e:HEV」のみ。
シビックのプラットフォームをベースにしながらも、変速機はモーター駆動を主体とした無段変速(事実上のオートマチック)一択という現実だった。
私自身、18歳で免許を取り、S13シルビア、S15シルビアと乗り継ぎ、夜な夜な峠道でヒール・アンド・トウの練習に明け暮れた人間である。
左足のクラッチ操作と右手のシフトチェンジ。それは、単なる機械の操作ではなく、クルマの心臓部と直接会話するための「言語」だった。
だからこそ、新型プレリュードにMTが設定されなかったことに対し、一抹の寂しさを覚えたのは否定できない。
なぜ、これほどまでに技術が進歩した現代においても、私たちは3ペダルを熱望してしまうのだろうか。
車好きがMT(マニュアル)を求め続ける本当の理由
今の時代、変速スピードや燃費効率、そして何より日常の利便性において、マニュアルトランスミッションが最新の2ペダル(ATやCVT、DCT)に勝てる要素は一つもない。
渋滞の坂道発進で神経をすり減らすこともなければ、シフトミスでエンジンを痛めるリスクもない。
それでもなお、私たちが左足を動かしたがる理由。それは、「不便さ」の中にある主導権を手放したくないからだ。
かつて私が23歳で、目一杯のフルローンを組んで手に入れたR32スカイラインGT-R。
重い強化クラッチを震える左足でミートさせ、ターボが立ち上がる瞬間の凶暴な加速を、自分の手と足で制御しているというあの手触り感。
あの頃のターボラグは、ただ遅いのではなく、未来への期待を溜めるための尊い時間だった。
マニュアル車を運転するということは、機械との間に介在する「翻訳機」を外し、直接肉声で語り合うようなものだ。
自分がミスをすればクルマはギクシャクし、完璧なタイミングでギアを繋げば、クルマは最高の咆哮で応えてくれる。
そこには、ごまかしの効かない「自分自身の器」が如実に表れる。
速さだけが理由じゃない。私たちがマニュアルを求めるのは、そのクルマの「魂」に直接触れたいからなのだ。
クラッチを持たない新たな対話「Honda S+ Shift」の衝撃
しかし、絶望するのはまだ早い。ホンダの開発陣は、決して「走る喜び」を捨ててエコに全振りしたわけではない。
新型プレリュードには、MTがない代わりに「Honda S+ Shift(エスプラスシフト)」という革新的なテクノロジーが初搭載されている。
これは、e:HEVの特性を極限まで活かした、全く新しいアプローチの変速制御だ。
単なる疑似的なマニュアルモードではない。
ソフトウェアとセンサーがドライバーのアクセル操作を瞬時に読み取り、エンジン回転数とモーターの出力を緻密にコントロールすることで、仮想的な8段ギアのステップアップシフトを実現している。
パドルシフトを弾いた瞬間、エンジンサウンドが心地よいリズムを刻み、背中を押されるようなダイレクトな加速感が立ち上がる。
クラッチペダルの重みや、シフトノブの機械的な手応えは確かに消えた。
しかし、コーナーへ進入する手前でブレーキングと共にパドルを引き、回転数を合わせてエイペックスから立ち上がっていくあの一連の所作は、紛れもなくスポーツドライビングそのものである。
ホンダは、内燃機関から電動化へと向かう過渡期において、「クラッチレス」という条件の下で、いかにしてドライバーの感情を揺さぶるかという難題に挑み、一つの見事な答えを出したのだ。

スペックと価格が語る、大人のためのスペシャリティクーペ
ここで、現在販売されている新型プレリュードの立ち位置と事実関係を整理しておこう。
車両本体価格は617万9800円〜6306万3000円。
この600万円台という価格帯は、かつての新車価格を知る世代からすれば「高くなった」と感じるかもしれない。
しかし、シビックタイプR譲りの高剛性シャシー、Brembo社製フロントアルミ対向4ポットキャリパー、アダプティブ・ダンパー・システムといった本格的なスポーツ装備を標準で備えていることを考えれば、決して割高ではない。
ボディサイズは全長4520mm、全幅1880mm、全高1355mm。
特筆すべきは、そのデザインだ。翼を広げたグライダーが大空を滑空する姿をイメージしたというエクステリアは、前端を低く抑えたフロントノーズから、なだらかに傾斜するルーフラインへと続く。
そしてリアには、先進性とクリーンさを象徴する横一文字のテールランプが配されている。
インテリアに目を向ければ、「グライディングコックピット」と名付けられた空間が広がる。
ブルーとホワイト(またはブラック)のコントラストが美しい専用コンビシートは、運転席はホールド性を、助手席は快適性を重視してそれぞれ専用設計されているという徹底ぶりだ。
さらに、Google搭載の9インチHonda CONNECTディスプレイや、BOSEプレミアムサウンドシステム、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING」も抜かりなく標準装備されている。
かつてのプレリュードがそうであったように、このクルマはただストイックに速さを求めるだけの機械ではない。
隣に大切な人を乗せ、静かで上質な空間を共有しながら、時にはドライバーの意思一つで鋭いスポーツカーへと豹変する。
そうした「二面性」こそが、大人のためのスペシャリティクーペが持つ最大の魅力なのだ。
荷室の広さと実用性:ゴルフバッグは積めるのか?
2ドアクーペを購入する際、避けて通れないのが実用性の問題である。
特に、30代後半から50代の大人にとって、休日の趣味の道具を積めるかどうかは死活問題だ。
新型プレリュードは、FF(前輪駆動)レイアウトの恩恵を最大限に活かし、クーペとしては驚くほど実用的な荷室空間を確保している。
後席は確かに、大人が長距離を移動するには少し窮屈な「2+2」のエマージェンシーシートという位置づけだ。
しかし、その背もたれを前に倒せば、広大なフラットスペースが出現する。
ルーフ後端まで大きく開くハッチバックゲートにより、荷物の出し入れは非常にスムーズだ。
片側のシートを倒せば、2人分のキャディバッグとボストンバッグを余裕で積載することができる。
つまり、早朝の澄んだ空気の中、極上のドライブフィールを味わいながらゴルフ場へと向かう、そんな優雅な休日を完璧にエスコートしてくれる相棒になり得るのである。
ユーザーの声を見ても、「S660からの乗り換えで、実物を見ないうちに契約した。長距離ドライブの快適さと使い勝手を犠牲にしないパッケージングが素晴らしい」といった、実用性と走りの両立を高く評価する声が届いている。
諦めるのは早い。噂される「タイプS」と「タイプR」の存在
さて、現行のe:HEVモデルの魅力は十分に理解した。それでもやはり、「自分の手と足で変速したい」という渇望を捨てきれない読者も多いだろう。
そんなエンスージアストたちをざわつかせているのが、自動車業界の裏側から漏れ聞こえてくる「追加モデル」のスクープ情報だ。
自動車情報誌などの報道によれば、ホンダは現在、新型プレリュードのさらなる派生モデルの投入を真剣に検討しているという。
まず現実味を帯びているのが「タイプS」の追加だ。
これは、現行シビックRSに搭載されている1.5L直列4気筒VTECターボエンジン(最高出力182ps、最大トルク24.5kgm)を移植する計画である。
登場は2026年中と予想されており、価格は現行のe:HEVモデルと同等の620万円前後になると見られている。
ただし、このタイプSに組み合わされるトランスミッションは、残念ながらシビック(LX/EX)と同じCVTになる可能性が高いという情報が有力だ。
しかし、本命はその先にある。
なんと、究極のスポーツモデルである「タイプR」の設定が水面下で議論されているというのだ。
もしプレリュード・タイプRが誕生すれば、そこに搭載されるのはシビックタイプRが誇る2.0L VTECターボエンジン(最高出力330ps、最大トルク42.8kgm)以外に考えられない。
新型プレリュードのホイールベースは2605mm。シビックタイプRの2735mmと比べて、実に130mmも短縮されている。
このショートホイールベースとワイドトレッドの組み合わせは、生粋のコーナリングマシンとしての素質を隠し持っている。
シビックタイプRがニュルブルクリンクでの圧倒的な「安定感と速さ」を追求したスタビリティ志向であるのに対し、ホイールベースの短いプレリュードに330馬力の心臓を与えれば、かつてのインテグラタイプRのように、ドライバーの腕が試されるキビキビとした「過激な操縦性」を持つFFスポーツが誕生するかもしれない。
そして、このタイプRが実現した暁には、間違いなく「6速マニュアル(6MT)」が設定されるはずだ。
予想される登場時期は2027年秋、価格は700万円から800万円クラスに跳ね上がると見られている。
もちろん、シビックタイプRの生産すら追いついていない現状において、プレリュードタイプRの市販化は経営判断として非常にハードルが高いのも事実だ。
しかし、「火のない所に煙は立たない」という言葉通り、ホンダ社内で熱い議論が交わされていること自体が、私たち車好きにとっては一筋の希望の光なのである。

考察:速さから対話へ。私たちがクーペに求めるものの変化
ここで少し、私個人の視点から新型プレリュードという存在について考察してみたい。
私自身、30代の頃はBMW E90 M3の高回転型V8エンジンの官能性に酔いしれ、その後はポルシェ 981ケイマン、991.1型カレラSと、ひたすらに「純粋なスポーツカー」の究極系を求めて乗り継いできた。
絶対的な速さ、ミッドシップやRRレイアウトがもたらす完璧なバランス。それは確かに素晴らしい体験だった。
しかし46歳になり、様々な経験を経て、私は今、再びR32スカイラインGT-R(ライトチューン)のステアリングを握っている。
最新のポルシェのような完璧さはない。危うさも、未完成な部分もたくさんある。
それでも私がR32に戻ったのは、「速さ」よりもクルマとの「対話」を求めたからだ。
新型プレリュードを見た時、私はふと、ステアリングを切る角度は、人生の選択と似ているのかもしれないと思った。
かつてのプレリュードは、若き日の私たちが背伸びをして乗る「憧れの象徴」だった。
あれから20年以上が経ち、社会の在り方も、私たち自身のライフステージも大きく変化した。
内燃機関の終焉が叫ばれ、自動車が単なる移動のツール(モビリティ)へと変質していく中で、ホンダは「プレリュード」という名前を使って、私たちにもう一度アクセルを踏む理由を問いかけているように感じるのだ。
「MTがないから本物のスポーツカーではない」と切り捨てるのは簡単だ。
しかし、Honda S+ Shiftがもたらす、モーターの静寂からエンジンの咆哮へとシームレスに切り替わるあの感覚は、ガソリンエンジンだけでは決して到達できない新しい次元の「対話」である。
それは、がむしゃらに速さを求めた若き日を通り過ぎ、酸いも甘いも噛み分けた大人が楽しむにふさわしい、洗練されたスポーツドライビングの一つの完成形と言えるのではないだろうか。
現行のe:HEVモデルは、日常の喧騒を忘れさせてくれる上質なGTカーとして、最高に優雅な選択肢である。
そして、もし数年後に6MTを引っ提げた「タイプR」が登場したなら、その時はまた、忘れかけていた情熱のエンジンに火を点け、泥臭く3ペダルと格闘すればいい。
どちらを選んでも、そこには「走る意味」を言葉で探す、豊かな旅が待っているはずだ。
まとめ
新型プレリュードに、現時点でMT(マニュアル)モデルの設定はありません。
しかし、ホンダはクラッチペダルを無くした代わりに、「Honda S+ Shift」という新技術によって、ドライバーの意思に直結する新しい操る喜びを創り出しました。
617万9800円という価格は、大人の余裕と洗練されたデザイン、そして実用性を兼ね備えたスペシャリティクーペへのパスポートと言えます。
さらに、将来的には1.5Lターボの「タイプS」や、6MT設定が期待される330馬力の「タイプR」追加の噂も絶えず、プレリュードの物語はまだ前奏曲(プレリュード)を奏で始めたばかりです。
時代が変わっても、私たちがクルマに求める「魂の対話」は、形を変えて確かに受け継がれています。
よくある質問
Q. 新型プレリュードにマニュアル(MT)車はありますか?
現時点でのラインナップはe:HEV(ハイブリッド)のオートマチック仕様のみであり、クラッチ付きのMT車の設定はありません。ただし、Honda S+ Shiftという新技術により、ダイレクトな変速感覚を楽しむことができます。
Q. 将来的にMTモデルが追加される可能性はありますか?
自動車メディアのスクープ情報によれば、シビックタイプRの2.0Lターボエンジンを搭載した「タイプR」モデルの追加がホンダ社内で検討されていると報じられています。これが実現した場合、6速MTが設定される可能性は非常に高いと考えられています。
Q. 新型プレリュードの価格とサイズはどれくらいですか?
車両本体価格は617万9800円〜です。ボディサイズは全長4520mm、全幅1880mm、全高1355mmとなっており、全幅が広めでロー&ワイドな大人のクーペスタイルが特徴です。



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